白は清潔感やスケール感を一気に引き上げますが、透けやすくムラも目立つため緊張します。だからこそ段取りを整え、下地の色と厚み、希釈と圧、乾燥の見極めまでを小さな基準で結んでいきます。この記事では下地選びから塗り順、仕上げと保護までをひと続きの道筋にまとめ、同じやり方を繰り返すだけで狙いの白に近づけるようにします。
- 白の発色を支える下地の色と厚みを決めます
- 希釈比と空気圧を記録して再現性を上げます
- ムラの原因を分解して対策を先に仕込みます
- トップコートと黄ばみ対策で白を守ります
ガンプラの塗装で白を美しく仕上げる|やさしく解説
白をきれいに見せる鍵は三つです。下地の明度を一定にすること、塗膜を薄く積むこと、乾燥を挟んで平面性を守ることです。まずは作業の順序を固定し、毎回同じチェックを通過してから次へ渡します。ここでぶれを減らせば失敗が減り、色の説得力が自然に上がります。
白が透ける理由を仕組みで押さえる
白は隠ぺい力が低く成形色や影を拾いやすい性質があります。下地が暗いと一層透けが強まりムラが目立ちます。そこで下地の明度を均一にそろえてから薄塗りで積み上げます。面ごとに光の向きを意識して、エッジと凹に影が残らないようストロークを安定させます。乾燥を短く刻むと塗膜がよれにくくなります。
道具と塗料を最初に固定して迷いを減らす
白だけは銘柄を変えると見た目が大きく揺れます。最初は一社の白と薄め液でセットを固定します。エアブラシは口径0.3〜0.4を基準にして、圧は弱めから始めます。筆塗りはフローインプルーバーで筆目を抑えます。記録用カードを作り、希釈と圧と往復数を書き留めて次回へ引き継ぎます。
下地の色は面積で選び順番で整える
広い外装は薄いグレーでトーンを整え、アクセントの白は白サフで明度を引き上げます。フレームに近い小物は黒下地で締めても効果的です。明るい下地→白→保護の順で薄く重ねます。最初の一往復は砂吹きで食いつきを作り、二往復目から均一に流していきます。厚塗りは避けましょう。
乾燥の目安を指ではなく視覚で判断する
指で触る前に反射で見る癖をつけると安全です。半乾燥は艶が半分落ち着いた状態です。そこで一拍置いて次の薄い層を重ねます。完全乾燥が必要な場面はデカールやマスキング前です。時間で決めず、温度と膜厚で見極めます。曇りや埃が出たら無理に触らずに翌日に回します。
作業環境を整えて白の清潔感を守る
白は埃が強く目立ちます。作業前にミストを一往復流して空気中の埃を落とし、衣服の繊維を払います。乾燥中はケースで覆い、扇風機の直風は避けます。作業台は黒いマットより明るい面が見やすいです。照明は色温度の違う二灯を用意すると黄色味や青味の偏りに気づけます。
- 洗浄と乾燥で油分と埃を断つ
- 下地色を統一して明度をそろえる
- 白を薄く二往復で乗せる
- 半乾燥で軽く追い吹きして均す
- 保護クリアを薄く重ねて守る
Q:成形色が濃い時はどうする?
A:先に薄いグレーでトーンを統一してから白に入ると透けを抑えられます。白サフの厚塗りは避けます。
Q:筆でも白はきれいに塗れる?
A:希釈を上げて二〜三回で仕上げます。筆目を抑える添加剤を使い、ストロークは一定にします。
Q:乾燥時間の基準は?
A:指触乾燥+αを段ごとに挟みます。マスキングやデカールは完全乾燥まで待つと安全です。
下地色の選び方とサーフェイサーの使い分け
白の見え方は下地で七割決まります。明度と彩度のコントロールを下地に担わせ、白本体は薄く均一に乗せる発想へ切り替えます。ここではサーフェイサーの色を目的で選び、厚みと吹き方を数値で固定して再現性を上げます。
白サフとグレーサフの役割を決める
白サフは明度を稼ぎ、グレーは面の荒れを見つけやすくトーンを落ち着かせます。広い外装はグレーで整えてから白へ進むと透けが減ります。傷消し狙いは遠目の砂吹き→一拍→近距離で重ねる手順が安全です。色を濁らせないために一度に厚く乗せないようにします。
黒下地は金属感と陰影の調整に効く
黒は白の隣に置く部位を引き締め、周囲の白を明るく見せます。センサー周りや関節部は黒下地で密度を上げると全体のコントラストが整います。白の中に黒を仕込むのではなく、帯やフレームで境界を作ると視線の整理が早くなります。
厚み管理でモールドを守る
サフは二往復を上限にして薄く段階を踏みます。モールドが浅い部位は角度を変えて霧を通し、溜まりを避けます。段差やピンホールは早い段階で手当てすると後の層が楽になります。サフ後は弱い光で斜めに見て反射の乱れを拾います。
- 白サフ:明度を確保し発色を軽くする
- グレー:面を整え色味を落ち着かせる
- 黒下地:金属色と陰影の基準を作る
- 足付け
- 塗膜の食いつきを良くする微細な傷を面に作る処理。
- 砂吹き
- 遠距離で細かい粒を乗せる吹き方。食いつきが安定する。
- レベリング
- 塗膜が自重でならされる現象。薄塗りと時間で促す。
- カブり
- 湿度や低温で白化する症状。天候と溶剤で回避する。
- ヒケ
- 乾燥で塗膜が凹む現象。厚塗りや短時間の繰り返しで起こる。
- 成形色が透けない明度まで統一したか
- サフは二往復以内で止められたか
- 段差やピンホールを初回で潰せたか
- 光を斜めに当てて反射を確認したか
- 次の層までの乾燥を十分に取れたか
エアブラシと筆で白を均一に乗せる
白は薄塗りの積層で透明感を保ちつつ隠ぺいを稼ぎます。エアブラシは距離とストローク、筆は希釈と荷重で安定します。ここでは両者の具体値と動かし方を示し、ムラや筋を抑えるための判断基準を整えます。
エアブラシの圧と希釈の初期値
口径0.3なら希釈1:1〜1:1.2、圧は0.05〜0.08MPaを起点にします。最初は砂吹きで食いつきを作り、二往復目から一定の速度で流します。ノズル先端の溶剤だまりはティッシュでこまめに拭きます。止め際はトリガーを戻してから手を離すと粒が乗りにくいです。
筆塗りの荷重と希釈の感覚
筆は希釈を上げて筋を消す方向へ調整します。荷重は自重+αに抑えて毛先を寝かせ過ぎないようにします。一回で決めず二〜三回に分けて仕上げます。エッジは先に薄く色を置き、面は最後に軽く伸ばして整えます。乾燥を挟むと筆目が起きにくいです。
ムラを抑えるストロークの固定化
面の長辺に合わせてストロークを一定にし、重なりは三割程度を目安にします。角では一瞬速度を落として霧が逃げないようにします。凹は先に薄く霧を入れてから面を流すと回り込みが安定します。迷ったら試し吹きカードで距離と速度を確認します。
| 方法 | 初期値 | ポイント | 確認 |
|---|---|---|---|
| エアブラシ | 希釈1:1 圧0.06MPa | 二往復で止め半乾燥で追い吹き | 反射の均一と粒の寝方 |
| 筆塗り | 希釈高め 二〜三回 | 荷重を軽くし筆目を伸ばす | 逆光で筋の残りを確認 |
| 共通 | 薄塗り積層 | 乾燥を挟み平面性を守る | 斜光で艶のムラを見る |
よくある失敗と回避策
粒が立ってザラつく:距離が遠いか圧が高いので近づけて圧を下げます。
ベタつきやすい:希釈が低く近過ぎ。希釈を上げ距離を戻します。
筆目が消えない:乾燥不足か荷重過多。時間を置きストロークを減らします。
- 二往復で一層と数える
- 重なりは三割で統一する
- 凹は先に霧を置いてから面を流す
- 止め際はトリガーを戻してから離す
- 筆は二〜三層で完成を想定する
白の色設計とわずかなトーン差の使い方
同じ白でも温度や明度が少し変わるだけで印象が大きく動きます。面積と位置を考えてトーンの役割を決め、視線の通り道を作ります。ここでは配色の比率と微妙な色の違いを設計し、のっぺりを避けて密度を上げます。
ニュートラルとウォームとクールの配分
基準はニュートラルを主役にして、局所で暖色寄りや寒色寄りを差す構成です。センサー周りや動力周辺はクール寄りにして機械感を強め、外装の広面はニュートラルで面の大きさを保ちます。アクセントにはほんの少し暖色寄りを差すと視線が動きます。
デカールとトーンの整合を取る
濃いデカールは白を引き締めますが面積が大きいと重く見えます。先にデカールの位置と面積をざっくり決めて、トーンを落とし過ぎないように配慮します。白の明度を一段だけ上げておくとデカールの黒や赤が乗っても沈みにくいです。
写真映えと肉眼の差を埋める設計
写真は光の当たり方で白飛びしやすいです。面の中央は少し暗く、縁は一段明るくすると輪郭が残ります。現物は距離で差が縮むので、強過ぎる効果は避けます。試し撮りを挟み、モニターで白飛びと影の強さを確認して調整します。
- 基準の白を決めカードで保存する
- 明度差を一段刻みで用意する
- 面積配分を主70副25差5で設計
- デカール位置からアクセントを逆算
- 試写で白飛びを確認し微調整
白装甲のスミ入れとウェザリングの加減
白は情報量の載せ方で雰囲気が大きく変わります。線を濃くし過ぎると玩具感が出て、薄過ぎると締まりません。ここでは溝の深さや面積に応じた色選びと順序を整理し、軽さを保ったまま密度を上げる方法をまとめます。
スミ入れ色は黒ではなく濃度で選ぶ
白に黒を入れると線が強く出て硬い印象になります。濃いグレーや茶系を使うと自然に落ち着きます。深い溝は濃度を上げ、浅いモールドは一段薄くします。拭き取りは外へ引くのではなく線に沿って軽くなでます。はみ出しは乾燥後に柔らかく整えます。
チッピングは位置とサイズを限定する
白は傷が目立つため広く入れると一気に汚れます。角や当たりの強い位置に点を置き、同色系で下地の影を作ってから金属色を控えめに重ねます。大きさは一定にせず、点と短線を混ぜると自然です。最後に極薄のフィルタリングで統一します。
粉系の質感は最後に軽く乗せる
ピグメントは白の清潔感を壊しやすいので局所に留めます。足元やノズル周りに薄く置き、定着剤で最小限に固定します。全体に広げるより、対角線上に点在させると視線が流れます。やり過ぎたら柔らかい筆で払って戻します。
- スミ色は濃いグレーや茶系で統一
- 線の太さは溝と面積で変える
- 拭き取りは線に沿って軽く行う
- チッピングは角と当たりに限定
- ピグメントは局所で控えめに使用
- 最後に薄いフィルタリングで束ねる
- 写真で確認して加減を調整する
- 保護クリアで地を守る
- 薄いスミ入れで線を立てる
- 点のチッピングで情報を足す
- 粉の質感を局所に置く
- 極薄フィルタリングで統一
トップコートと黄ばみ対策で白を守る
白は完成後の扱いで劣化が見えやすい色です。光と熱、皮脂で黄変が進むことがあり、艶の管理でも印象が変わります。ここではトップコートの選び分けと乾燥、保管の工夫をまとめ、白の清潔感を長く保つ方法を整理します。
艶別の役割と使い分け
つや消しは情報量を整理し傷が目立ちにくいです。半光沢は素材感を残し万能に使えます。光沢は密度を上げますが埃と傷が際立ちます。外装は半光沢、フレームや武器はつや消し、センサーは光沢に分けると立体感が増します。天候と湿度でカブりに注意します。
黄ばみを避ける生活習慣
直射日光と高温多湿を避けるだけでも黄変を抑えられます。ケースで防塵し、触る時は手袋を使います。長期展示は光量の低い位置に置き、定期的に向きを変えると片寄りを防げます。夏季は空調と除湿を軽く効かせます。
再コートとメンテナンスの考え方
小傷が気になる時は薄く再コートして整えます。重ねる前に埃を払って試し吹きで艶を合わせます。黄変は塗膜自体の変化なので削っての復元は難しいです。無理をせず新しい個体で再挑戦する判断も作品を守る選択です。
Q:つや消しで白が灰色に見える
A:光の乱反射で暗く見えます。半光沢に戻すか白本体を一段明るくして調整します。
Q:光沢で埃が止まらない
A:吹く直前に軽くミストを流し、乾燥はケースで覆います。研磨や磨きは完全乾燥後に行います。
Q:黄ばみが出たらどうする
A:原因が光や熱なら進行を止める環境へ移します。無理に研ぐより再制作を検討します。
- つや消し:落ち着くが暗く見えやすい
- 半光沢:素材感が残り万能で扱いやすい
- 光沢:密度が上がるが埃に敏感
まとめ
白をきれいに見せる近道は、下地で明度をそろえ薄く積み重ねることです。希釈と圧と往復数をカードに残し、毎回同じ順序で確認を重ねると安定します。線や傷は控えめに入れて、最後に艶で情報量を整えます。完成後は光と熱と埃から守るだけで印象は長く保てます。
完璧を目指すより合格ラインを早めに決めて進めると作品が増えます。次の一体では「下地の色」と「二往復で止める」を合言葉にしてみてください。白の難しさが少しずつ味方に変わり、あなたの作風がはっきりと立ち上がっていきます。

