プラモデルのゲート処理を基礎から極める|白化を抑えて仕上げを磨く

ランナーから切り離した跡が白っぽくなったり、面の光が乱れて気持ちが沈むことは少なくありません。作業は丁寧にやっているつもりでも、材質や工具の相性で結果が安定しないこともあります。この記事ではゲート処理の考え方を整理し、二度切りから仕上げまでを一本の流れに整えます。
読み終える頃には白化を抑え、面とエッジを守りながら気持ちよく組み進められるはずです。

  • 応力を逃がす切り方と持ち方の基準
  • 材質ごとの白化リスクと工具の選択
  • 番手のつなぎ方と艶合わせのコツ
  • トップコートや保護の考え方

プラモデルのゲート処理を基礎から極める|運用ベストプラクティス

最初に全体像をつかみます。鍵は応力をどこで解放するかと、切削と研磨の役割分担です。ゲートは樹脂を金型へ送る通路で、切り離しの瞬間に素材へ力が集中します。ここで無理に押し切ると白化が出やすく、面の平滑さも損なわれます。二度切りで余剰を残し、支点を工夫しながら近づくと結果が安定してきます。
材質や形状によって安全な角度が変わるため、観察と手の位置決めをセットで考えるのが近道です。

なぜ白化が起きるのかを簡潔に掴む

白化は樹脂内部の微細な割れや空隙による光の乱反射です。PSは比較的起きやすく、ABSやクリアはさらに顕著に現れます。刃で押し潰す動きやパーツを強くひねる操作が原因で、カットの角度と支え方で多くが防げます。ランナー側で応力を受け止めつつ、パーツの付け根に直接圧を掛けないよう、刃を寝かせて浅く入れると安全です。切る前にパーツを手前へ軽く引くと、ゲート側へたわみが逃げて白化が減ります。

二度切りの角度と支点で応力を逃がす

最初はゲートから2〜3mm残してランナーカットし、次にパーツに近い位置で静かに詰めます。二回目は刃の平らな面をパーツ側へ当て、押し込まずに刃先だけで切り離します。指の支点は必ずパーツ側に置き、刃物が勝手に潜らないよう微細に揺らしながら進めると安全です。ゲートが太い場合は斜めに小さく2回に分け、最後に水平で仕上げると面が乱れにくくなります。硬いABSは温度が低いと割れやすいので、室温を上げてから作業すると安心です。

アンダーゲートとスライド金型の観察眼

アンダーゲートは目立つ面を避けた設計で、跡が見えにくい反面、切りにくい位置にあります。無理に刃を届かせようとするとえぐれやすく、ナイフや薄刃ノコを併用したほうが安全なこともあります。スライド金型の合わせ目付近は形状が複雑で、ゲート切断後に段差が残ることがあります。最初に目で流れを追い、どこまでが面でどこからがエッジかを把握しておくと、後の研磨で余計な平面を崩さずに済みます。

クリアとABSで変える力の入れ方

クリアは光を通すため、白化やクラックが小さくても目立ちます。必ず二度切りし、最後はナイフで薄く削いで仕上げるのが安全です。ABSは粘りがあり、刃を押し付けると白い靄のような痕が出やすい素材です。薄刃ニッパーで切断面をできるだけフラットにし、研磨は細かい番手を短時間で抜けるのがコツです。どちらもパーツを強く握ると応力が集中するため、支えは軽く広くを心掛けるとトラブルが減ります。

デザインナイフで整えるときの基準

ナイフは「削る」より「削ぎ落とす」意識で使うと安全です。刃を寝かせ、面と平行に薄片を連続して剥ぐと段差が出にくくなります。刃の先端だけで点に力が集まると抉れやすいので、1〜2mmの刃元を当て、短いストロークで止めていくと安定します。仕上げにスキン仕上げ用の極細番手で軽く均せば、光の乱れが整います。刃は迷わず替えることが品質の近道です。

手順ステップ(二度切りの流れ)

1) ランナー側で余裕を残して一次カット

2) パーツを支点で固定し、刃の平らを面へ

3) 小刻みに近づき、最後は軽い力で切り離す

4) ナイフで薄く削いで段差を整える

5) 番手を上げながら最小限で研磨する

注意:クリアやメッキは白化や剥離が出やすい部材です。切断は必ず低速で、刃をねかせて押し潰さないように進みます。メッキは下地の樹脂が露出しやすいので、ナイフの削ぎに切り替えると安心です。

ミニ用語集

・ランナー:パーツの周囲の枠。樹脂の通路です。

・ゲート:パーツへ樹脂が入る枝。切断跡が残ります。

・白化:切断時の応力で生じる微細な割れの見え方。

・二度切り:余剰を残してから近接で仕上げる方法。

・アンダーゲート:目立たない位置に設けられたゲート。

白化を抑えるための材質と工具の見極め

結果の安定は材質刃物の特性の理解から始まります。PSとABS、クリア、POMは手触りと破断の仕方が違い、同じ切り方でも結果が変わります。薄刃ニッパーは切断面がきれいですが刃欠けしやすく、作業のリズムを意識すると寿命が伸びます。ナイフとヤスリは「当てる角度」と「当てる時間」で品質が大きく変わります。
素材に合わせて力の掛け方を変えるだけで、白化は目に見えて減っていきます。

薄刃ニッパーの特性と寿命管理

薄刃は刃の食い込みが軽く、押し潰しが出にくいのが利点です。一方で硬いABSや太いゲートでは刃の根元に負担がかかります。太い枝は必ず一次カットを入れ、刃を閉じ切る直前で止める癖をつけると寿命が延びます。刃先でひねるのは厳禁で、切り残しは必ず二度目のカットやナイフで処理します。作業後は切断粉を拭き、油分を薄く残すと錆と摩耗を抑えられます。落下は一発で刃を痛めるため、作業トレイを用意しておくと安心です。

刃物とヤスリの役割分担を決める

刃物は段差を最小化する道具、ヤスリは面を整える道具と捉えます。刃物で出た微小な段差は番手を上げる前に中番手で均し、仕上げ番手は短い回数で抜けます。面が狭いところはスポンジ系がフィットし、角の立つところは当て木で平面を保つと均一に仕上がります。削り粉は光の乱れの原因になるため、工程ごとにブロワで払うと効果的です。ヤスリは目詰まりが品質を落とすので、コンディション管理も品質の一部です。

研磨ブロックと当て木で面を保つ

手の指腹だけで磨くと、指の柔らかさでエッジが丸くなりやすいです。研磨ブロックや当て木にペーパーを貼ると面が逃げず、光の筋が整います。曲面はスポンジ、平面は硬いブロックと役割を分けると仕上りが安定します。特に大きい外装は面が命なので、当て木のサイズを面の幅に合わせるだけで別物の仕上がりになります。狭い面は棒ヤスリや爪楊枝にペーパーを貼った治具が活躍します。

比較

メリット:薄刃は切断面が綺麗/当て木は平面が崩れにくい。
デメリット:薄刃は刃欠けリスク/素手研磨はエッジが甘くなりやすい。

Q&AミニFAQ

Q:ABSはどうして白化しやすい?
A:粘りがあり押し潰し痕が残るためです。一次カットと高番手短時間で対処します。

Q:ニッパーは何本必要?
A:普段用の薄刃と荒仕事用の汎用刃の2本が現実的です。

Q:ナイフとヤスリの順番は?
A:ナイフで段差を小さくしてから中番手→仕上げ番手の流れが効率的です。

ミニチェックリスト

□ 太いゲートは必ず一次カットを入れたか

□ 刃の平らを面へ当て、押し潰していないか

□ 当て木やブロックで平面を維持できているか

□ クリアやABSは力を弱め、工程を細かく分けたか

切る削る磨くの順で整える実践フロー

工程は切る削る磨くの三段で考えます。切る段階で面を傷めなければ、後工程は短く済みます。削る段階は段差を消すことに集中し、磨く段階は光の乱れを整えることに専念します。工程を混ぜず、目的を一つに絞ると手が迷いません。
番手の上げ下げは最小限にし、粉を払ってから次へ進むだけでも仕上がりが変わります。

番手のつなぎ方と段差の消し方</