- 見せる箇所を先に決めて色数を2〜3段に絞る
- ABSやKPSの相性を把握し、下地の種類を選ぶ
- 摺動部は塗らない・薄く塗るなどの方針を用意
- 可動テストは塗装前後で二度行い渋みを確認
- 写真と簡単なメモで段取りを可視化しておく
ガンプラのフレーム塗装を極める道筋|背景と文脈
最初の設計は欲張らず、見せ所・可動・下地の三点をそろえることが軸になります。関節の摺動面を避けつつ、目に触れる外周だけを厚くしない方針が扱いやすいです。塗る前に一度だけ全分解し、合わせ目と接触面を確認しておくと想定外が減ります。撮影や展示の角度も先に想像しておくと、色の優先順位が自然に決まります。
完成像の定義と優先順位のつけ方
素立ちとアクション、どちらを主に見せたいのかを最初に決めます。素立ちは面の整いが効き、アクションは関節の陰影が効きます。塗る量は写真に写る範囲を基準にし、装甲を被せた状態で覗く位置をチェックすると無駄が減ります。色数は多くても三段が目安で、濃淡の差を小さく揃えると落ち着いた印象になります。
素材の確認と下地の安全側の選択
フレームはABSやKPSが混在する場合があり、溶剤に弱い部位が含まれることがあります。弱めのプライマーや水性下地を併用すると安心感が高まります。ランナー刻印や質感で当たりを付け、念のため目立たない所でテストすると判断が固まります。合わない塗料は避け、別のアプローチへ切り替える柔らかさが役に立ちます。
下地色と面の情報整理
黒系は締まりが増し、グレー系は関節の形が読みやすくなります。暖色をわずかに混ぜると温度感が出て、寒色を混ぜると金属寄りに感じられます。下地は一色に決める必要はなく、膝や肘など目立つ節だけ別下地にすると立体感が出ます。塗り重ねは薄く数回に分けるとトラブルが少なく進みます。
可動とクリアランスの考え方
摺動部は塗らない、もしくは擦れ面だけを残す方針が現実的です。ピンと穴の嵌合は数十ミクロンの差で渋くなり、厚塗りの影響が出やすい領域です。仮組みで回転方向と当たり面を把握し、紙やすりで軽く面取りしておくと余裕が生まれます。塗装後は一気に動かさず、段階的に可動域を広げると割れを避けやすくなります。
色設計とアクセントの分配
メカグレーを基調に、ピンやシリンダーに鉄色や焼け色を一滴だけ加えると情報が増えます。ケーブルに暗い銅色、ピストンに半光沢銀など、部位ごとの役割を色で区切ると視線が流れます。装甲との対比も効くため、外装が白い場合はやや濃い目、暗い場合はやや明るめのフレームが映えます。
- 完成角度を一つ決め、見せる関節を特定する
- 素材を確認し、弱めの下地を候補に入れる
- 当たり面を軽く面取りし、摺動部を把握する
- 下地→本色を薄く重ね、乾燥に余白を置く
- 可動テストで渋みを確認し、必要なら当てる
- 摺動
- 擦れ合って動くこと。塗膜が厚いと渋くなりやすい。
- 面取り
- 角をわずかに落として組みやすくする処理。
- 下地
- 本色の前に敷く層。食いつきと色の発色に関わる。
- 嵌合
- ピンと穴などの噛み合い。渋さや緩さに影響。
- 本色
- 最終的に見える色。下地との相性で見えが変化。
素材別の相性と下処理の勘所
内部フレームは材質が混在しやすく、ABS・KPS・PSで挙動が変わります。負担の少ない下処理に寄せると破損の確率が下がり、可動を保ったまま質感を整えやすくなります。素材を断定できない時は安全側の工程に寄せ、無理に攻めない設計が長期的には得です。
ABSの扱いと接着/塗装の安全側
ABSは耐衝撃性が高い反面、溶剤の影響を受けやすい場面があります。下地は弱溶剤や水性を優先し、乾燥時間を長めに取ると安定します。強い可動部は塗らず、見える端部だけを薄く彩る選択も十分に効果があります。接着は部位によっては機械的勘合を活かすと破断の予防になります。
KPS/PSの下地選択と研磨の度合い
KPSは腰のある材質で、薄塗りの重ねに向いています。PSは一般的な成形材で、表面の目を整えるだけでも塗装の乗りが良くなります。600〜1000番の研磨で微小な傷を揃え、粉を丁寧に払うと発色が整います。角を落としすぎないよう、面を保ったまま均すのが目安です。
可動ピン/軸のマスキングと保護
ピンとスライド軸は薄い皮膜でも渋みの原因になりやすいです。事前にマスキングで保護する、またはワセリン等で軽く逃がしておく方法もあります。塗装後の剥がしで周囲を傷めないよう、端からゆっくり外すと安心です。軸の先端は塗らない選択が可動の余裕に効きます。
素材ごとに工程を分けると失敗の再現性が下がり、乾燥の見積もりが安定します。可動域を保ったまま質感が整えやすくなります。
工程が増えると管理が複雑になります。メモと写真で切り分け、戻れる設計にしておくと負荷が軽くなります。
- ランナー刻印で材質の当たりを取る
- 未知の組み合わせは端材で試す
- 摺動部は塗らないか、極薄で止める
- 乾燥に余白を置き、触る日は分ける
- 写真で手順を残し戻れる道を作る
肩軸の渋みで悩んだ時、ピンの先端だけ塗らない設計に切り替えました。見た目は変わらず、動きは軽くなり、以後の工程も穏やかに進みました。
色設計と質感表現:金属感から樹脂感まで
フレームの魅力は、表面の質感の差で生まれます。金属寄りの冷たい輝き、樹脂寄りの落ち着いた半艶、ゴムのような沈んだ黒など、役割ごとの素材感を割り振ると情報が整理されます。色は少なく、艶と粒度の違いで変化を付けると破綻が少なく、光の回りも綺麗に落ち着きます。
金属感の出し方と下地の鏡面度
金属表現は下地の平滑さが要です。鏡面に寄るほど映り込みで密度が増します。光沢銀の前に黒やダークグレーを薄く整え、面を平らにしてから金属色を軽く重ねると穏やかな輝きになります。摺動部には半光沢やつや消しを採用し、指紋や擦れの影響を抑えると扱いやすさが上がります。
樹脂感と半艶のコントロール
膝や肘の受けなど、衝撃を受け止める部位は樹脂の落ち着きを感じる半艶が向きます。黒に少量の茶や青を混ぜると温度感が変わり、視認性も上がります。同色系の中で艶をずらすだけでも効果があり、部品の役割が自然に伝わります。光の角度を変えて確認すると決めやすくなります。
配線/ピストンなどアクセントのさじ加減
配線には暗い銅や鈍い金、ピストンには明るい銀を薄く置くと、目線のガイドになります。多用すると雑味になるため、全体の5〜10%に抑えるのが目安です。外装を被せると見える面積がさらに減るため、完成後の角度を想像しながら配置すると過不足が整います。
- 基調色:全体の70%前後
- 金属アクセント:全体の10〜15%
- 樹脂半艶:全体の10〜15%
- その他ポイント:全体の5%前後
Q.金属色が粉っぽくなる?
A. 下地の平滑不足が原因になりがちです。薄く研いで乗せ直すと粒が整います。
Q.艶の違いが分かりにくい?
A. 斜めの弱い光で観察すると差が見えます。トップコートで最終調整も有効です。
Q.色数は何色が良い?
A. 基調1+アクセント2の合計3段が扱いやすい目安です。
- 金属は高光沢は1〜2部位に絞る
- 半艶は関節受けや干渉部に寄せる
- 黒系は温度感を微調整して重さを演出
- 外装の色と明度差を0.5〜1段で設定
- 写真確認を工程の節目に挟む
マスキングと塗り分けの分割術
細分化しすぎない工程が、完成までの速度を保ちます。工程の束ね方を決め、同じ持ち替えで塗れる部位を先に集めると、洗浄と乾燥の回数が減ります。マスキングは時間を食いやすい作業ですが、テンプレ化できる形が多く、治具や型紙で効率が大きく変わります。
工程の束ね方と洗浄サイクル
「持つ→吹く→置く」のリズムを崩さないため、似た形状を同じ回で処理します。乾燥は平日夜を活用し、休日に段差の大きい塗り分けを回すと落ち着きます。洗浄はまとめて行い、ノズルの乾燥を徹底すると再開が軽くなります。工程は三束くらいに絞ると迷いが減ります。
曲面マスキングのコツ
細幅テープを複数本で曲率を分けると皺が寄りにくくなります。外周から中心に寄せ、端の浮きを指で転がして整えると境界が綺麗です。剥がしは塗膜が軟らかいうちに端を少し起こし、完全乾燥後に本剥がしを行うと境目が乱れにくくなります。型紙を一枚作ると再現が容易です。
小物の同時処理と治具化
ピンや短いシリンダーは爪楊枝や治具に留め、向きを素早く変えられる状態にすると濡れが均一になります。同色を同時に進めると、希釈比の再現性が高まり色差が出にくくなります。乾燥台は段ボールとスポンジでも十分に機能し、置き場を固定すると紛失も防げます。
| 場面 | 道具 | ねらい | 注意 |
|---|---|---|---|
| 曲面 | 細幅テープ | 皺の抑制 | 重ね角はずらす |
| 狭所 | 綿棒/楊枝 | 微調整 | 繊維残りに注意 |
| 小物 | 治具 | 均一塗り | 持ち替え頻度を減らす |
| 直線 | 金定規 | 型紙作成 | 刃はこまめに交換 |
| 剥がし | ピンセット | 角の保護 | 乾燥後に本剥がし |
境界のにじみ:塗りすぎが原因になりがちです。最初は薄く、端に吹き込まない角度を意識すると落ち着きます。
段差の段違い:色の厚み差を減らすため、重ね回数を揃えると改善します。トップで均しても良いです。
マスキング跡の糊残り:剥がすタイミングを早めるか、相性の良いテープへ切替が有効です。
- 同形状を束ねて色順を決定
- 曲面テンプレを一枚作成
- 端の浮きを転がして密着
- 薄吹き→本吹きの二段で進行
- 半乾燥で仮剥がし→全乾燥で本剥がし
トップコートと可動テスト:干渉の調律
仕上げは艶の統一と干渉の緩和が焦点になります。トップコート・当たり出し・可動検証を順に行うと、塗膜を守りながら動きの手触りが整います。艶は一段だけ変える方針が扱いやすく、半艶を基準にポイントでつや消しや光沢へ振ると情報が整理されます。
艶調整と保護の考え方
半艶は汚れも指紋も目立ちにくく、フレームの質感に向きます。光沢は金属表現など一部に限定し、つや消しはゴムや樹脂の印象へ寄せます。トップは薄く複数回で、乾燥へ余白を置くと白化の回避に役立ちます。艶が揃うだけで完成度が上がり、写真写りも穏やかになります。
当たり出しと干渉の見極め
可動の渋みは、塗膜ではなく設計の遊びに起因することもあります。擦れる箇所は鉛筆やマーカーで当たりを確認し、紙やすりでわずかに逃がすと解決へ近づきます。パーツの根元を保持し、力の向きを一定にして調整すると破損のリスクが下がります。無理に広げず、少しずつ触れるのが安全側です。
可動テストと再トップの判断
動かす範囲を段階で広げ、渋みが出たら戻って当たりを取ります。最終の手入れで艶が乱れた場合は、局所的に再トップで均せます。全体の艶は触らず、必要箇所だけに留めると安定します。撮影前に一度だけ各関節を動かし、擦れが起きない角度を把握すると安心です。
- 半艶を基準にポイントで艶を切替
- 可動域を段階化し渋みを確認
- 鉛筆で当たりを写し取り逃がす
- 必要箇所のみ再トップで整える
- 撮影角度で最終の可動チェック
艶と干渉の整理で手触りと見映えが両立し、展示と可動の双方に配慮した仕上がりになります。
触り過ぎると塗膜が疲れます。テストは各関節一往復を上限にし、異常がなければ深追いしない方が無難です。
配分と思考整理:ラリー発想で進める作業計画
時間と集中力は日によって揺れます。そこで、短時間前提の設計へ寄せると気持ちが軽くなります。バドミントンのラリーのように、返せる一球だけを返す意識で工程を分割し、成功体験を毎回積むと完成までの道筋が自然に続きます。撮影と片付けも同じ設計に含めると流れが整います。
15〜30分単位のミニ工程化
「洗浄だけ」「下地一層だけ」「写真だけ」など、細切れでも前進する小さな工程に分けます。短時間で結果が見える作業を最初に置くと、次の一手が軽くなります。翌日の自分にメモを残し、工具の位置だけ整えて終えると再開が楽です。工程を貯金する感覚で配分していきます。
撮影と共有で客観視
工程の節目で写真を一枚撮ると、色の段差や艶の乱れが見つかります。背景紙はA3程度でも十分で、斜めからの柔らかい光に寄せると質感が整って見えます。SNS等に上げる場合も、途中写真は次の改善点のメモになります。過去写真との比較は、同じ失敗の再発防止に効きます。
完成後の扱いとメンテの軽量化
フレームは触れる頻度が高いほど擦れやすくなります。展示時は角度を決め、可動は撮影時だけ使う方針に寄せると塗膜が長持ちします。ホコリはブロワで軽く払うと十分で、布での拭き取りは最小限に留めると傷の予防になります。ケースの利用も検討すると安心です。
- 終わりの5分で工具を戻し次のメモを書く
- 写真は引きと寄りを各1枚ずつ残す
- 撮影の光は弱めで角度を変えて確認
- 展示角度を一つ決めて触る頻度を抑える
- 月一で艶の乱れを軽く整える
練習帰りの短い時間でも、下地一層だけ進める日を作りました。小さな前進が積み上がり、完成が近づくにつれ迷いが薄れていきました。
Q.時間が取れない日は何をする?
A. 洗浄や写真整理、次の色決めなど短い工程を一つに絞ると負担が軽く進みます。
Q.集中が切れたら?
A. 工具を戻し、次の一手を一行でメモして終えると再開の障壁が下がります。
まとめ
内部フレームは見せ場と可動が同じ場所に集まるため、工程の設計が仕上がりを左右します。素材の相性を確かめ、下地と色数を絞り、摺動面は塗らない・薄く塗るなど安全側の方針へ寄せると、手触りと見映えが両立します。マスキングはテンプレ化で時間を抑え、艶の統一と当たり出しで最終の手触りを整える流れが穏当です。作業はラリー発想で小さく刻み、写真とメモで客観視すると、完成までの道筋が自然に続きます。無理のない計画で、一体ごとの個性を気持ちよく引き出していきましょう!

