プラモデルのキャンディ塗装を選ぶ|下地設計と発色の段取りで艶と深みを目指す

透き通る色の奥に金属光沢がのぞくキャンディ塗装は、下地からの積み重ねで印象が決まります。失敗の多くは順番か濃度、そして乾燥の見極めが要因です。
そこで本稿では、最初の準備から写真映えまでを一連の流れで整理し、色別の考え方や道具選び、段差の予防と回復を通して、安定した艶へ近づける道筋を用意しました。まずは作業スペースと時間配分を整え、ムリなく続く段取りに落とし込むのが近道です!

  • 下地は“質感の土台”、色は“透明のカーテン”と捉える
  • 希釈と圧力は固定し、距離で微調整する
  • 乾燥は“指で触れない時間”を基準に余裕を持つ
  • 段差は早めの中研ぎで浅いうちに処理する
  • 艶出しはクリア層の厚みで安定させる
  • 写真は背景の彩度を落として深みを際立てる
  • 片付け導線を決めて次回の再現性を高める

作業のリズムはバドミントンのラリーに似ています。濃度や圧力を一定に保つ“基礎”が安定すると、色の重ね方という“配球”で表情を作りやすくなりますね。

プラモデルのキャンディ塗装を選ぶ|はじめの一歩

キャンディ塗装は、金属感を持つ下地透明色を重ね、最後にクリア層で艶と保護を確保する三層構成が基本です。金属粒の向きと密度、透明色の厚み、クリアの平滑性がそろうと、角度によって色の深さが変わる独特の魅力が出ます。まずは層の役割を正しく分担させ、無理のない工程順に落とすことが成功への近道です。

金属下地の役割と選択肢を押さえる

下地の金属層は“光の反射板”の役割です。細かいシルバーは均質で扱いやすく、粗いフレークはギラつきが強調されます。金色寄りの下地は赤や琥珀に温かさを与え、黒光沢+メッキ調は鏡面に近い鋭い反射を狙えます。
部品のサイズが小さい場合は粒子の細かい塗料を選ぶとスケール感が崩れにくいです。ムラが出たら乾燥後に極薄で重ね、粒感を整えてから次工程へ進むと安定します。

透明色(キャンディカラー)の濃度を決める

透明色は“カーテン”の厚さで発色が変わります。希釈はやや薄めから始め、乾燥を挟みながら少しずつ重ねるのが目安です。濃く感じたら距離を離し、霧を細かくして薄い膜を重ねると滑らかに深まります。
カップ内の色は寝かせると沈殿しやすいため、塗装前に軽く撹拌して均一化しておくと色段差が出にくいです。色の偏りが出たら面の端から中央へ“扇形”で往復すると落ち着きます。

乾燥と硬化の見極め方

乾燥は表面が触れても付かない“指触乾燥”、内部まで固まる“硬化”で段階が異なります。透明色は膜が薄くても溶剤が残るため、短時間の重ね過ぎは曇りの原因です。
触らずに置ける時間を基準に、工程間の休憩を余裕めに取ると失敗が減ります。気温が低い日は乾燥が遅れがちなので、送風だけでなく作業時間を分ける運用が穏当です。

工程の順番をシンプルに保つ

洗浄→サフ→金属下地→透明色→クリア→中研ぎ→最終クリアの順を基本に組みます。途中の手戻りが出た場合でも、前工程に戻り過ぎないのがコツです。
透明色の後に段差を感じたら、薄いクリアで“なだらか”にし、乾燥後の中研ぎで均すと安全です。順番を崩さないほど仕上がりが再現しやすく、次回の調整もしやすくなります。

作業環境と光の管理

埃と湿度は艶の敵です。作業台を湿らせた布で拭き、送風で舞い上がりを抑えるだけでも効果があります。
照明は昼白色寄りを基準に、側面からの補助光を足すと色の厚みが読めます。温度は20〜25℃が目安で、寒い日は塗装時間を短く刻むと失敗が減ります。持ち手は向きを変えやすい位置に刺すと、角度の付け替えが滑らかです。

可燃性の溶剤を扱うため、火気と換気に配慮が必要です。マスクや手袋はサイズが合う物を選び、長時間の作業は小休止を挟むと集中が保てます。

Step 1 洗浄と乾燥で下準備を整える。

Step 2 サフで傷を均し、面のうねりを確認する。

Step 3 金属下地を薄く重ね、粒の揃いを待つ。

Step 4 透明色を薄膜で往復し色の深みを育てる。

Step 5 薄いクリアで面をならし休憩を置く。

Step 6 中研ぎで段差を弱め、埃粒を落とす。

Step 7 最終クリアで艶を安定させ、乾燥へ。

キャンディ — 透明色を重ねて奥行きを出す表現。

メタリック — 金属粒を含む塗膜。反射で輝きを担う。

ベースコート — 透明色の下になる下地層。

中研ぎ — 途中で軽く研ぎ、段差や埃を緩和。

ダストノイズ — 付着した埃の点。早期処理が有効。

フェザーリング — 境界を羽のようにぼかす吹き方。

色別レシピと下地比較の考え方

色の印象は、下地の色味透明色の厚み、そして光の回り方で決まります。赤は温かく、青は冷たく、琥珀は包み込むように見えますが、最終的な“らしさ”は下地の選び方で左右されます。ここでは代表的な三系統を取り上げ、無理のない配合と重ね方を示します。

レッド系で“深さ”を出す配合

赤は金色寄りの下地と相性が良く、温かい雰囲気に寄ります。銀下地に比べて彩度は落ちますが、角度によって琥珀が差し込み、包み込む印象が育ちます。
透明赤はやや薄めの希釈から開始し、3〜5回の重ねで様子を見るのが目安です。強い赤を目指すなら、最初にほんの少しオレンジを差し、最後は赤だけで締めると自然です。クリア前に一休みを入れると濁りを避けやすいです。

ブルー/グリーン系で“透明感”を保つ

青や緑は銀下地で冷たい輝きが立ち、粒子の細かさが重要になります。濃く重ね過ぎると黒ずみが出やすいため、距離をやや取り、風を弱めて霧を細かく当てるのが安定です。
青に少量の緑を差すと海の深さが出て、逆に緑に青をわずかに混ぜると清涼感が増します。最後は薄いクリアで面を揃え、乾燥を長めに取ると透明感が保たれます。

アンバー/オレンジ系で“温度”を添える

アンバーやオレンジは金色や銅寄りの下地で一体感が生まれます。食玩のような温かい艶を狙うなら、透明色を薄く多回で重ね、濃さは写真で確認しながら進めるのが無理のない手です。
濁りを避けたいときは、最初の2回を薄く広く、その後の2回を狙い撃ちで締める“前広がり→集中”の配分が穏当です。最後はクリアを静かに重ね、休ませると色ムラが落ち着きます。

メリット

・赤+金下地は包容感のある深み

・青/緑+銀下地は清澄な透明感

・琥珀+銅寄りは温度のある艶

留意点

・濃度上げ過ぎは黒ずみの原因

・下地の粒が粗いとスケール感が崩れる

・乾燥不足は曇りや擦り傷を誘発

・希釈の起点:1.2〜1.8倍

・重ね回数:3〜6回

・乾燥の目安:各層10〜20分

・温度:20〜25℃

・ノズル:0.3mm中心

「赤が強すぎた回は、金下地の上に薄いオレンジを一回だけ挟んでから赤に戻すと、トーンが落ち着きました。重ねを急がない方が結果的に近道でした。」

エアブラシ設定と道具選びの最適域

道具は“再現性の源”です。ノズル径圧力、そして希釈が決まれば、距離と速度で微調整するだけで狙いに寄せられます。ここでは典型的な設定の幅と、手元で迷わないチェックポイントを並べ、作業のラリーを止めない環境を整えます。

ノズル径ごとの狙いと使い分け

0.2mmは細吹きに向き、狭いパーツや縁の“締め”が得意です。0.3mmは万能域で、広い面でも点でもバランスよく対応します。0.5mmは広面を素早く覆える反面、薄膜でのコントロールに注意が要ります。
キャンディ塗装では0.3mmを軸に、細部だけ0.2mmで補うのが扱いやすいです。噴き出しの安定には、塗装前の短い空吹きが役立ちます。

圧力と距離、速度の関係

0.08〜0.12MPaは扱いやすい帯です。圧を上げれば粒は細かくなりますが、跳ね返りも増えるため距離を伸ばす必要があります。
距離は8〜12cmを起点に、面の大きさに合わせて変えます。速度は“光の筋”が残らない程度に一定へ寄せると、ムラが出にくいです。面の端ではトリガーを抜き、塗り重ねの境界を軽くぼかすと自然に繋がります。

希釈と塗料管理のポイント

希釈は“薄く複数回”を軸にし、金属下地はやや濃いめ、透明色は薄めからが目安です。気温と湿度で乾き方が変わるため、同じ比率でも“吹き心地”で微修正すると整います。
カップの底で色が濃くなりやすいので、休憩ごとに軽く撹拌を入れると色ズレが防げます。使い切れなかった塗料は別容器に移し、次回のテストピースに回すと無駄が減ります。

□ ノズルは0.3mmを起点にする

□ 圧は0.1MPa前後で様子を見る

□ 距離は10cm前後で均一に往復

□ 透明色は薄めから段階的に濃く

□ 休憩ごとにカップを軽く撹拌

□ 使い残しはテスト用に保管

□ 終了時はニードル先を確認

・0.3mm使用率:全体の70%

・0.1MPaでの安定度:高

・希釈1.5倍での再現性:良

Q. 0.2mmだけでも足りますか。
A. 可能です。ただし広面は時間が延びがちです。透明色の乾き待ちが多くなるため、休憩の配分を多めにすると安定します。

Q. 圧が高いとムラが消えますか。
A. 一時的に均されますが跳ね返りが増えます。距離と速度も合わせて整えると落ち着きます。

Q. 希釈の基準が揺れます。
A. 気温差の影響です。まず距離と速度を固定し、希釈だけを小刻みに動かすと感触が掴めます。

マスキングと段差対策で境界を美しく

境界は作品の印象を大きく左右します。順番の設計段差の早期処理、そして薄いクリアでの“ならし”が揃うと、剥がした瞬間に気持ちよく決まります。ここではマスキングの流れと段差を深くしない考え方を整理します。

マスキングの順を整えてトラブルを抑える

金属下地を傷めないよう、先に広い面を塗り、次に狭い面を重ねる順が安定です。境界のテープは端を軽く押さえ、塗る方向と逆側へ“逃げ”を作ると滲みが出にくくなります。
剥がしは塗装面に沿って寝かせる角度で行い、層を引っ張らないようにします。曲線は幅の狭いテープで分割し、角に無理な力が掛からないようにするのが穏当です。

段差の浅いうちに対処する

段差は“早いほど軽く終わる”課題です。薄いクリアを1〜2回重ねてから、中研ぎで軽く均すと境界が滑らかになります。
粗い番手で強く削ると色が透けるため、透明色の上は細番手で軽く往復するのが無理のないやり方です。最終クリア前に段差が指で感じない程度まで整えておくと、艶が途切れません。

クリアで均して境界を隠す

透明色が終わったら、薄いクリアで境界を“包む”ように重ね、乾燥後に軽い中研ぎを入れます。これを1サイクルとして2〜3回繰り返すと、段差が視覚的に消えていきます。
強い力をかけず、面の変化を光で確認しながら進めるのがコツです。最終クリアは面を一枚の膜で覆うイメージで、噴きの重なりを均等にすると落ち着きます。

よくある失敗1:境界がギザギザ。
回避策:細幅テープで曲線を分割し、端の“逃げ”を作る。

よくある失敗2:段差が消えない。
回避策:薄いクリア→中研ぎのサイクルで浅いうちに処理。

よくある失敗3:色が剥がれる。
回避策:剥がし角度を寝かせ、温めて粘着を弱めてから外す。

  1. 広い面→狭い面の順に色を配置
  2. 曲線は細幅で分割しテンションを逃がす
  3. 端を軽く押さえ滲み道を作らない
  4. 薄いクリアで包み乾燥を置く
  5. 中研ぎで段差の山を削る
  6. 必要に応じてサイクルを重ねる
  7. 最終クリアは均一な重なりで覆う
  8. 剥がしは面に沿わせてゆっくり行う

テープの粘着は季節で変化します。冬は温めてから、夏は短時間で貼り替える運用が、塗膜の負担を抑える目安になります。

トップコートと研ぎ出しで艶を安定させる

最後の仕上げは、クリア層の厚み平滑化、そして艶のコントロールです。透明色は傷が目立ちやすいため、クリアで十分な膜厚を確保し、段階的に研いで面を整えると、写真でも実物でも気持ちの良い艶が続きます。

トップコートの種類と選び方

ラッカークリアは扱いやすく乾きも早い一方、耐擦傷は薄膜だと下がりがちです。水性アクリルは匂いが穏やかで、軽い艶やかさを保ちたいときに合います。
2液ウレタンは強固な膜を作れますが、準備と乾燥に時間を要します。作品の用途と保管環境を見て、扱える範囲で選ぶと無理が出にくいです。どの種類でも薄→中→厚の三段で重ねると安定します。

研ぎ出しの番手と力加減

段階は霧吹き+耐水を基本に、面の凹凸を小さくするイメージで進めます。粗い番手は“山の頭”だけを狙い、力を入れ過ぎないのが要点です。
透明色が出る手前で止めるため、光の反射を斜めから見て、曇りと艶の境界が整ったところで区切ると安心です。仕上げはコンパウンドを小面積で回し、熱で軟化しないよう間隔を空けます。

艶の仕上げを使い分ける

高光沢は映り込みで“ガラス感”を、半艶は落ち着いた“面の滑らかさ”を強調します。透明色が濃い作品では、高光沢の厚膜が奥行きを支えます。
半艶へ寄せたい場合は、最終クリアを控えめにし、面を整える研ぎをやや深めに入れると穏やかな反射に寄ります。写真では背景の彩度を落とすと、艶の違いが伝わりやすいです。

種類 特徴 乾燥の目安 適性
ラッカー 扱いやすく乾きが早い 30〜60分 小物や短時間の仕上げ
水性アクリル 匂いが穏やか 60〜120分 室内での軽作業
2液ウレタン 硬く厚い膜を作れる 半日〜 耐久を重視する作品
Step 1 薄いクリアで面を覆い休ませる。

Step 2 中研ぎで埃粒と僅かな段差を落とす。

Step 3 中〜厚のクリアで艶の土台を作る。

Step 4 細番手→コンパウンドで平滑化。

Step 5 乾燥後に指紋と拭き傷を点検。

よくある失敗1:磨き過ぎで色が出た。
回避策:段階を分け、曇りの残るうちに止めて再クリアで復帰する。

よくある失敗2:艶が揺れる。
回避策:厚みを一定にし、面の端でトリガーを抜いて重なりを均す。

よくある失敗3:拭き筋が残る。
回避策:柔らかい布と少量のクリーナーで、面を押さえずに滑らせる。

応用下地と演出の幅、保管と安全の基礎

表現の幅は、下地の選択肢混色の小さな工夫、そして保管の環境で広がります。プラモデル キャンディ 塗装の魅力を長く保つには、派手さと落ち着きのバランス、写真の中の空気感、そして作品を支える運用の“地味な正解”が大切です。

パールやホログラムで光の粒を演出

パールは“面で光る”、ホログラムは“粒で光る”イメージです。パールは下地と透明色の間に極薄で入れると、角度で色の変化が軽やかになります。
ホログラムは粒が強いため、ピンポイントに使うと主役を邪魔しません。どちらもクリアで一度包み、段差が浅いうちに軽く研いでから次へ進むと、表面の均一感が維持できます。

木目やカーボン表現との相性

木目の上に薄いアンバーを重ねると温度が上がり、家具や楽器のような雰囲気に寄ります。カーボン表現では、黒の上にごく薄い青や紫を差すと、冷たい艶が生まれます。
どちらも“やり過ぎない”が目安で、透明色は薄く少しずつ。境界はテープの下で段差が育ちやすいので、薄いクリアで包みながら進めると自然です。

運用と保管で艶を守る

紫外線は色あせの要因です。直射を避け、ケース内は乾燥剤と柔らかい台座で支えると安定します。指紋は艶を曇らせるため、触る前に手を拭き、布手袋も候補になります。
可塑剤の強い素材と長時間接触させると、塗膜が柔らかくなる場合があるので、間に紙を挟むと安心です。移動時は固定を二点以上にして、振動で面が擦れないようにすると長持ちします。

  • 直射を避け、温湿度の急変を抑える
  • 台座は柔らかい素材で面圧を分散
  • 布手袋やマイクロファイバーを用意
  • 可塑剤の強い素材とは直接触れさせない
  • 搬送は二点以上で固定して揺れを減らす
  • 定期的に埃を弱い風で払う
  • 写真は低彩度背景で艶を引き立てる
良い運用

・透明色は少量ずつ重ねる

・保管は日陰と乾燥剤で安定

・搬送は柔らかい支持で保持

注意点

・強い可塑剤に長時間触れない

・直射と高温を避ける

・無理な一度塗りは濁りの原因

Q. パールとホログラムはどちらを先に。
A. 粒の弱いパールを先に、強いホログラムを後に薄く。クリアで一度包むと段差が抑えられます。

Q. 紫外線での変色が心配です。
A. 日陰のケースと紫外線カットの板で十分に軽減できます。長時間の直射を避けるのが目安です。

Q. 指紋の跡が残りました。
A. 乾燥後に極薄のクリアで覆い、軽い研ぎで均すと目立ちにくくなります。次回は触る前の手拭きを習慣化すると安心です。

まとめ

キャンディ塗装は、金属下地・透明色・クリアという三層の役割を丁寧に分け、順序と乾燥を守るほど安定します。
色は下地で方向性が決まり、重ね方と光の扱いで“奥行き”が整います。工程ごとの小さな休憩や中研ぎは、段差と曇りを早めに抑える働きを担います。エアブラシの設定は0.3mmと0.1MPa前後を起点に、距離と速度で微調整すると再現性が高まります。

仕上げはクリア層の厚みで艶を安定させ、番手を刻んだ研ぎ出しで面を平らに整えるのが近道です。
保管では直射を避け、指紋や可塑剤から守るだけでも艶の寿命は伸びます。まずは小さなテストピースで今日の気温と湿度に合う希釈を探り、無理のない段取りで“深みのある一枚の膜”を作っていきたいですね。