この記事では、下地色の選び方から艶と粒度の整え方、色別の相性、トラブルの戻し方までを具体的な目安でつないでいきます。
- 最初に合格点の鮮やかさと金属感を決める
- 下地は粒度と明度で役割を分けて考える
- クリアは薄く重ねて光路を濁らせない
- 磨きは面を崩さず艶だけを整える
- 色ごとの相性をテストピースで把握
- ムラは厚みの配分で落ち着かせる
- 白化や割れの戻し道を先に用意する
キャンディ塗装の下地でおすすめを決める|チェックポイント
ここでは仕上がりの到達点を「鮮やかさ」「金属感」「安定度」に分解し、判断の拠り所を作ります。断定よりも目安を積み上げる姿勢が、色の深みと作業時間の両立に効きます。
透明色と金属下地の関係
キャンディ層は光を透過させ、下地の反射で色が持ち上がります。反射が強いほど彩度は上がりやすい一方、粒の大きいシルバーは粗が見えやすくなります。粒度は細かめから始めるのが無難です。
反射と明度の仕組み
下地の明るさは色の鮮やかさに直結します。明るい下地は色を軽く、暗い下地は締まった印象に寄せます。最終の視距離と写真での見え方を先に決め、評価環境を固定すると安定します。
下地色で変わる色味の差
同じレッドでも、ブラック下地は深みが増し、シルバー下地は鮮やかさが立ちます。ホワイトは軽く清潔な方向へ寄るため、小スケールや軽快な表現と相性が良いです。
表面粗さが与える影響
透明層は細かな凹凸を拾います。磨きの番手を上げるより、圧を一定にして面を崩さず整えるほうが効果的です。粗さが残ると光が乱反射し、くもりや白化の原因になります。
目的別の合格ライン
写真映えを狙うなら彩度と艶の統一を優先し、手に取る模型なら擦れに強いクリア厚を確保するのが目安です。工程の重さに応じて、下地の選択を現実的な範囲へ調整します。
1. 評価距離と写真の光を固定し、合格点を決める。
2. 粒度の細かいシルバーとブラックで小面テスト。
3. 透明層は薄吹きで積層し、艶は最後に合わせる。
下地カラー別のおすすめ構成
色の性格と作業のしやすさを両立するために、下地を役割で使い分けます。ここではシルバー、ブラック、ホワイト/グレーの三本柱を取り上げ、長所と留意点を整理します。迷ったときの基準を先に持っておくと、色選びが軽くなります。
シルバー系の選び方と発色
細粒メタルは発色が素直で、透明層の色をまっすぐ持ち上げます。粗いフレークは強いギラつきが出て、角度で色味が変化しやすいです。最初は細粒→中粒の順で試す流れが扱いやすいでしょう。
ブラック下地で締める手法
ブラックは深みとコントラストを与え、同じ彩度でも落ち着いた表情に寄せます。厚く重ねると暗く沈むため、透明層は薄く回して明度を保つのがコツです。エッジの効いた面と相性が良いです。
ホワイト/グレーで軽く見せる
ホワイトは軽さと清潔感を出し、淡いキャンディで効果的です。グレーは発色を安定させる緩衝役になり、粒度の見えを抑えます。中明度のグレーから始めると失敗が減ります。
シルバー:鮮やか◎/粗目はギラつき△
ブラック:深み◎/暗転に注意△
ホワイト/グレー:軽さ○/彩度は控えめ○
・粒度:金属顔料の細かさ。粗いとギラつきが増える。
・光路:透過光と反射光の通り道。厚みで変化する。
・暗転:重ねすぎで明度が落ちる現象。層を薄く回避。
・緩衝:ホワイトやグレーで彩度や粗さを和らげること。
・統一艶:最後に艶を合わせて見え方を揃える考え。
・粗目シルバーで粒が暴れる→細粒へ戻して透明層を薄く。
・ブラックで沈む→吹き回数を減らし、明度を半段上げる。
・ホワイトが軽すぎる→中グレーで中和して色の芯を作る。
金属感を高めるベース作り
金属感は粒度と艶、そして面精度の三点で決まります。鏡面を目指すより、“乱れの少ない平滑さ”を先に整えると、透明層の深みが活きます。ここでは磨きとクリアの厚みを、戻しやすい順で管理します。
粒度の細かいメタル下地
アルミ系の細粒は角度変化がなだらかで、写真でも破綻が少ないです。中粒は光の筋が出て迫力が出ますが、ムラの影響が強まります。目的に応じて粒度を切り替えると表情が出ます。
磨きと艶の段取り
磨きは面を崩さない圧で広く当て、最後は艶で整えます。クリアを薄く重ね、乾燥→軽い磨き→再クリアの小回りが安定します。艶は最後に全体で合わせて統一します。
クリア層の厚み管理
透明層は厚みで色と艶が変化します。薄く重ねるほど色が抜け、厚いほど深みが出る一方で暗転しやすくなります。狙いの色に届いたら、以後は艶の調整に役割を移すのが安全です。
1. 下地を細粒で整え、面のうねりを減らす。
2. 透明層を薄く重ね、乾燥後に軽く磨く。
3. 狙いの色で止め、艶は全体で最後に合わせる。
・粒度:細粒→中粒の順で試す。
・厚み:色決定後は艶調整に役割移行。
・磨き:線で当てず、面で静かに当てる。
・乾燥:短い休止を挟み溶剤を抜く。
・評価:写真の側光と肉眼の両方で確認。
色設計と下地の相性を読み解く
同じ手順でも、色ごとに最適な下地は変わります。レッドは温度感と深み、ブルー/グリーンは抜けの良さ、イエロー/オレンジはくもりへの耐性が鍵です。ここでは代表色の相性表と実践のヒントを並べます。
レッドキャンディの定番構成
レッドはブラックで深み、シルバーで鮮やかさが強まります。落ち着きを狙うならブラック寄り、華やかさなら細粒シルバー寄りが目安です。透明層の厚みで温度感を微調整します。
ブルー/グリーンの透明感
ブルーとグリーンは抜けの良さが魅力です。シルバー下地で素直に伸び、ブラックでは深い水色や深緑へ寄ります。ホワイトは軽快なガラス感が出ます。
イエロー/オレンジの発色注意
イエロー系は濁りを拾いやすく、下地の粗が目立ちます。細粒シルバーと明るめのグレーで受け、透明層は薄く回すのが安全です。オレンジはブラックで落ち着かせると密度が出ます。
| 色 | 下地の相性 | 狙い | 厚みの目安 |
|---|---|---|---|
| レッド | 黒◎/細粒銀◎ | 深み/華やか | 薄→中 |
| ブルー | 細粒銀◎/白○ | 透明感 | 薄→薄 |
| グリーン | 細粒銀◎/黒○ | 抜け/深さ | 薄→中 |
| イエロー | 細粒銀◎/明灰○ | 濁り回避 | 極薄 |
| オレンジ | 黒○/銀○ | 密度/明るさ | 薄→中 |
Q. レッドが暗い?
A. 透明層の回数を一往復減らし、細粒シルバー寄りへ戻すと軽く見えます。
Q. ブルーが軽すぎる?
A. ブラックで下地を締め、透明層は薄く保つと深みが出ます。
Q. イエローが濁る?
A. 下地を明るいグレーへ替え、厚みを極薄で止めると抜けが戻ります。
実践フロー:小物から大面積まで
工程は「小さく試して、大きく適用」の順が安定します。小物で配合と厚みの範囲を把握し、大面積ではムラを抑える吹き方へ切り替えます。マスキングは段差を作らない粘着管理が要です。
小パーツでの検証の回し方
色と厚みの許容範囲を先に探ると、大面積で迷いが減ります。透明層は一往復ごとに乾燥を入れ、写真で評価して記録を残すと再現性が上がります。
大面積のムラ対策
一定速度のストロークと、ややオーバーラップ気味の往復が基本です。曲面は吹き付け角を浅くし、境界をぼかして筋を避けます。距離は近すぎず遠すぎず、同じ距離を保つ意識が効きます。
マスキングと段差
段差は透明層で強調されます。テープは圧を弱め、境目は早い段で軽く馴染ませます。剥がしは完全乾燥前の“指離れ”を目安に行うとほつれが出にくいです。
- 小物で配合と厚みの許容を把握する。
- ストロークと重なり幅を一定化する。
- 曲面は角度を浅くして筋を避ける。
- テープ圧を弱く保ち段差を作らない。
- 剥がしは完全乾燥前のタイミングで。
- 写真で色と艶を記録しておく。
- 展示光で最終確認を入れる。
「小物で厚みの限界を先に把握したら、大面積でも暗転せずに狙いの色へ着地できた。」
・筋ムラ→重なり幅を一定に、角度を浅く調整。
・段差強調→早期の馴染ませ+弱いテープ圧へ。
・暗転→一往復削って艶で整える方針へ切替。
トラブルシューティングとメンテナンス
透明層は環境の影響を受けやすく、白化や割れ、かすれが出ることがあります。戻しの順序を決めておくと被害を最小化できます。保管と清掃の習慣も、色の鮮度を保つ助けになります。
白化/かすれの戻し方
白化は湿気・厚み・艶消しの過多が原因になりがちです。半光沢を薄く一往復して均一化し、乾燥後に必要なら透明層を極薄で補います。かすれは距離と角度の見直しで落ち着きます。
透け/ムラの緩和
透けは厚み不足、ムラは速度差や重なり幅の乱れが主因です。薄く一往復足して明度を調整し、境界は角度を浅くして馴染ませます。色決定後は艶で統一して見え方を整えます。
クリア割れと再塗装
割れは厚み過多と乾燥不足、下地との相性が重なって起こります。まずは休止で溶剤を抜き、割れが浅い場合は局所の磨きと艶合わせで対応します。深い割れは段差処理→再塗装が安全です。
- 白化は半光沢の薄吹きで均一化を試す。
- ムラは重なり幅と速度の一定化で予防。
- 割れは休止→局所磨き→再塗装の順。
- 保管は防埃と温湿度の安定を優先。
- 展示前は写真と肉眼の二系統で確認。
- 清掃は拭き取り主体で静電気を抑える。
- 点検日は月初に固定して習慣化。
白化対処:半光沢◎/再塗装△ 割れ対処:再塗装◎/局所磨き○
まとめ
キャンディ塗装の肝は、下地の粒度と明度、透明層の厚みを役割で分けて扱うことです。シルバーは鮮やかさ、ブラックは深み、ホワイト/グレーは安定の受け皿という整理で、色ごとの相性を早く掴めます。工程は小物で範囲を確認し、大面積では一定の重なり幅とストロークでムラを抑える流れが安心です。
トラブルは“薄く均して様子を見る”を起点に、白化は半光沢、割れは休止と再塗装という戻し道を準備しておくと落ち着きます。目安を積み上げ、評価環境を固定するだけで、鮮やかさと金属感の両立は現実的な距離に近づいていきます!

