本稿は「設計→下地→マスキング→デカールとクリア→光と陰影→運用と保護」の六章構成。各章で“目安の帯”を提示し、小さな試し塗りから本番へ進む流れで迷いを抑えます。まずは狙う表情を一文で言語化し、そこへ必要な線幅と光の強さを逆算していきましょう。
- 狙う表情を一文に圧縮し、線幅と光沢の帯を決める。
- 下地は白寄りと中間灰を試し、発色の差を確認する。
- マスキングは貼る前に“逃げ”を作り、にじみを抑える。
- デカールの銀浮きは段差と空気を減らす方向で対応。
- 仕上げの光は側面から弱く、映り込みを管理する。
ガンプラの目の塗装を整える設計と実践|チェックポイント
最初に「どんな目にしたいか」を言葉で固めると、線幅・色味・つやの判断がぶれにくくなります。ここではスケール感、ディテールの読み替え、下描きの段取りを軸に、作業を小さく確かめる方法をまとめます。導入段階で選択肢を広げすぎず、目安の帯を先に置くと着地が穏やかです。
スケール感と線幅の帯を決める
1/144では主線0.10〜0.20mm、1/100では0.15〜0.25mmが見えやすい帯です。これより太いと顔が幼く、細すぎると存在感が弱まります。黒は強く見えるため、実際の幅より細く描くと均衡が取れます。
目の構造を“読み替える”設計
モールドが浅いキットでは、段差を“描き込み”で補う方法が有効です。上まぶたの影を細く入れると目が締まり、瞳孔は点で置くと鋭さが出ます。白目は真っ白よりわずかに灰を混ぜた方が厚みを感じます。
マスキングか直描きかの選択
左右対称を優先するならマスク、表情の微調整を優先するなら直描きが合います。ハイブリッドとして外周はマスク、内側は筆で寄せると、調整の幅が残りやすいです。迷ったら外周マスクから始めるのが安全です。
下描きと当たりの取り方
極細シャープや薄い色鉛筆で瞳の位置に当たり線を置くと、ズレの検出が早くなります。消し残りはクリアで馴染むため、気負わなくても大きな問題にはなりにくいです。
失敗の早期発見ループ
「片目だけ塗る→写真で拡大→左右差を修正→もう片方へ」の短いループは効果的です。実寸では気づきにくい歪みも拡大で見つけやすく、戻しのストロークが短く済みます。
- 狙う表情を一文で定義する。
- 線幅の帯(例:0.15±0.05mm)を仮決めする。
- 外周をマスク、内部は直描きの可否を決める。
- 片目で試し塗り→拡大確認→修正。
- 左右を合わせ、光沢の帯を決めておく。
□ 線幅は帯で決めたか
□ 外周と内部の役割を分けたか
□ 片目で試してから両目へ進むか
□ 光沢の最終イメージは共有できているか
注意:線幅の微差は“顔全体”の印象に直結します。片目ずつの短い検証を挟むと、戻しの負担が軽くなります。
下地と発色:明度・彩度・色相の整え方
発色は下地の明度で大きく変わります。黒に近い地で緑を乗せると沈み、明るい地では鮮やかに転びます。ここではサフと地色の選び方、色の三要素の扱い方、メタリックや蛍光の使い所を整理します。
サフと地色の組み合わせ
白サフは鮮やかに、中間灰は落ち着きに寄ります。目は小面積なので、中間灰→白の点置き→本色の順で“にごり”を抑えると穏当です。黒立ち上げはコントラストが強く、鋭い印象に寄りやすいです。
明度・彩度・色相の帯
黄緑〜緑の目なら、黄寄りは優しく、青寄りは冷たく見えます。彩度は高すぎると玩具感が出るため、ひと段落として中彩度で止めると扱いやすいです。明度は周囲装甲より半段明るいと目が埋もれません。
メタリック・蛍光の扱い
メタリックは粒が大きいとスケールが崩れます。極細粒か、半艶で鈍らせると落ち着きます。蛍光は差し色として点で効かせ、下に白を薄く敷くと発色が安定します。
白下地:鮮やかで軽い。にごりにくい。/灰下地:落ち着いて厚みが出る。彩度はやや沈む。/黒下地:コントラストが強く鋭い。塗りムラに注意。
- ミニ統計:白下地は彩度体感+1段/灰下地は明度体感-0.5段/黒下地は輪郭強調+小面積で効果が大きい。
- にごり
- 色が濁って見える現象。下地色や重ね過ぎで起きやすい。
- 半段
- 明度・彩度の微差。目は“半段”の差で印象が変わります。
- 極細粒
- メタリックの粒子が非常に小さい状態。スケールに馴染みます。
マスキングと筆・エアブラシの使い分け
にじみや段差を減らすには、マスキングの前処理と塗料の粘度管理が重要です。ここではテープと液体マスクの特性、筆塗り・エアブラシの長所短所、乾燥と重ねの間合いをまとめます。
テープと液体マスクの選択
外周の直線や大きな曲面はテープ、細かな囲いは液体が向きます。テープは貼ってから爪で軽く“逃げ”を作ると、段差に塗料が溜まりにくいです。液体は厚塗りを避け、薄く2回が目安です。
筆塗りのコントロール
希釈は“筆が走る最小”を探すのが近道です。筆先は常に尖らせ、面から離れるときは速度を上げてエッジを柔らかくします。はみ出しは乾いてから極小で削ると、地を荒らしにくいです。
エアブラシの安定帯
圧は0.05〜0.08MPaの低圧で、距離は2〜4cmが小面積の帯です。薄く重ねて“色の霧”を置く感覚に寄せると、ムラが見えにくくなります。乾燥は風を弱め、塗膜を動かさないのが穏当です。
- 貼る面を脱脂→テープで外周を作る。
- にじみやすい角は軽く押さえて逃げを作る。
- 薄く一回、乾かしてから重ねる。
- 外す方向は塗った面に対して外へ向ける。
- はみ出しは完全乾燥後に整える。
よくある失敗と回避策
失敗1:にじむ→対策:下地を半艶に整え、テープのエッジを圧してから薄塗り。
失敗2:段差が残る→対策:境界へ薄いクリアを一度挟む。
失敗3:筆跡→対策:希釈をわずかに上げ、最後だけ一方向で流す。
・テープは貼ってから“逃げ”を作る
・筆は尖らせて一方向で抜く
・低圧・近距離で薄く重ねる
・乾燥は風を弱めて塗膜を守る
アイデカールとクリア層:段差の馴染ませ方
デカールは精密で便利ですが、段差や銀浮きが出ることがあります。ここではデカールの種類別の選択、密着を高める前処理、クリアで段差をならす順序を表とFAQで整理します。
水転写とドライの選び分け
曲面や段差には水転写、フラットな面や微細な図柄にはドライが扱いやすいです。水転写は軟化剤の強さを段階的に試し、無理に一度で落とさない方が破綻が少ないです。
密着と銀浮きの予防
地を半艶〜艶ありへ寄せると密着が上がります。気泡は綿棒で中心から外へ逃がし、余分な水分をきちんと抜くと銀浮きが減ります。乾燥後に軽く追い押しすると端が落ち着きます。
クリアで段差をならす
クリアは薄く複数回で段差を埋めるのが穏当です。厚く一度で覆うと流れやすく、周囲に段差の“壁”が残りやすいです。中研ぎは極細で、図柄に触れないよう帯で当てます。
| 局面 | 推奨処置 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 曲面 | 水転写+弱軟化剤 | 数分放置→追い押し | 無理に動かさない |
| 微細図柄 | ドライ | 位置決めは一度で | 粘着で欠けに注意 |
| 銀浮き | 艶上げ→追い押し | 半艶以上 | 乾燥後に再圧着 |
| 段差 | 薄クリア多層 | 2〜4回 | 中研ぎはごく軽く |
| 端の浮き | 切り込み+軟化 | 1〜2本 | 裂けの拡大に注意 |
Q&AミニFAQ
Q. 銀浮きが消えません。
A. 地を半艶以上に上げ、乾燥後に追い押し→薄クリア一回→再度確認の順が目安です。
Q. 端がめくれます。
A. 端へ短い切り込みを入れて軟化剤で追い、乾燥後に薄くクリアで押さえると落ち着きます。
注意:デカールの破綻は“焦り”と相性が悪いです。乾燥の時間を帯で決め、動かす回数を減らすと安定します。
光と陰影:ハイライト・影・つやの管理
仕上げの光は表情を決めます。ハイライトは細く短く、影は薄く短く置くと、縮尺が崩れにくいです。ここでは塗装での光の足し方、影の入れ方、つやの選択を段階で示します。
ハイライトの置き方
瞳の外縁に沿う細い線、または点で置くと生っぽさが出ます。線は短く、点は小さく。白だけで強いと浮くので、周囲の色に少し寄せると馴染みます。
影の入れ方
上まぶたの下へ薄い影を短く入れると、目が締まります。長く描くと目が疲れて見えるため、短く区切るのが穏当です。影の色は黒より暗い灰や茶が自然です。
つやの選択と混合
艶ありは鋭く、半艶は落ち着き、艶消しは柔らかく見えます。目の光沢だけ半艶〜艶ありに寄せ、周囲を控えめにするとコントラストが整います。段差を消した後に最終つやを合わせると破綻が少ないです。
- ハイライトは線なら短く、点なら小さく置く。
- 影は黒でなく、暗い灰や茶で短く。
- つやは目だけ半艶以上、周囲は控えめに。
- 映り込みは側面光で管理し、上からは補助。
- 仕上げ前に一度写真で拡大し、強すぎる箇所を引く。
- ハイライトの位置と形(線/点)を決める。
- 影の色を黒以外で選び、短く置く。
- 目だけ半艶〜艶ありへ寄せる。
- 写真で拡大し、強すぎる箇所を微調整。
- 全体のつやを整え、映り込みを確認する。
艶あり:鋭い反射でキラッと見える/半艶:反射が細く落ち着く/艶消し:影の幅が広がり柔らかい。
運用と保護:展示・撮影・メンテナンス
完成後のトラブルは搬送や保管で起きやすいです。ここではクリア層の黄変対策、持ち運びでの干渉回避、撮影での見え方調整を、事例・FAQ・チェックリストでまとめます。
クリア層の黄変と避け方
黄変は光と温度の影響を受けやすいです。強い光を避け、温度は緩やかに一定へ寄せると進行が緩みます。保護は薄く一回を基本に、必要に応じて重ねるのが穏当です。
持ち運びと干渉の管理
顔の保護は“面で支える”が基本です。マスクやスポンジで点で押さえると跡が残りやすいです。ケース内の隙間は小さすぎると擦れ、大きすぎると揺れが増えるため、適度な帯を探します。
撮影での見え方調整
撮影は側面からの一灯、上からの補助で映り込みを制御します。露出はやや抑え、後処理で微調整。背景は中間色で目の彩度を支えます。
搬送時、スポンジの“点当たり”で目に跡が付いたことがありました。以後は幅広の当て紙で“面で支える”方式に切り替え、擦れと圧痕が減りました。
Q&AミニFAQ
Q. 目だけ曇ります。
A. つや差が大きいと結露のように見えます。環境を馴染ませてから撮影すると落ち着きます。
Q. クリアが厚くなりがちです。
A. 薄く分けて、中研ぎは図柄に触れない帯で当てると段差が自然に消えていきます。
□ 面で支える梱包になっているか
□ 強い光を避けた保管か
□ 撮影の側面光と上補助の角度は適正か
□ 露出を抑え、後で微調整する前提か
まとめ
ガンプラの目の塗装は、線幅・下地・光の三点で印象が決まります。線は帯で管理し、外周はマスク、内部は直描きも併用すると微調整がしやすいです。下地は明度で発色が変わるため、白と灰を試し、メタリックや蛍光は点で効かせると安定します。
デカールは密着と段差を薄いクリア多層で馴染ませ、仕上げの光は側面一灯+上補助で映り込みを整えます。保護と運用は“面で支える”梱包と緩やかな環境へ寄せる配慮が目安です。小さな試し塗り→拡大確認→微修正の短いループを挟むと、表情が穏やかに決まり、見る距離でも崩れにくくなります。

