ガンプラを全塗装する工程の見取り図|道具と下地から仕上げまでの流れを押さえよう

ガンプラを全塗装で仕上げると、素組みでは出せない質感や立体感が生まれます。とはいえ「何から始めるか」「どこで失敗しやすいか」が曖昧だと、色ムラや粉吹きで気持ちが萎えてしまいます。そこで本稿では、工程を作業環境→下地→色設計→吹き付け→仕上げ→再組立の順でならし、各段で判断の目安を置きます。
迷ったら作業を小分けにして、乾燥と見直しの時間を挟むだけでも安定します。表面は思った以上に情報量が多く、小さな段差や油分が仕上がりを左右します。だからこそ、段取りの地図を手元に置いて進めると安心です!

  • 最初に整えるのは換気と光量、次に工具の保守
  • 下地は「洗浄→傷管理→成形」の順で負荷を分散
  • サフは色設計の試写台、厚塗り回避が基本
  • 希釈と圧力は塗料に合わせて狭い範囲で微調整
  • マスキングは「面→境界→点」の順で段差を抑制
  • 仕上げ三点はスミ入れ・デカール・トップコート
  • 組立前に干渉点の再確認、保管と撮影で締める

ガンプラを全塗装する工程の見取り図|疑問を解消

工程の安定は、道具の性能よりもまず環境のばらつきを減らすことが近道です。塗料は温度と湿度に敏感で、同じレシピでも日によって乾きと艶が変わります。ここでは換気・照明・防塵・騒音の4点を土台にして、コンプレッサーやエアブラシの実用域を見極めます。
使い心地の良い配置にすると、マスキングや洗浄の手戻りが減り、集中が続きます。

作業机・換気・照明の基準

塗装ブースは吸気と排気のバランスが整う位置に置き、吹き返しを防ぎます。机上は左に未処理、中央に作業、右に乾燥と流すと、動線が短くなり手の油分付着も抑えられます。照明は昼白色を主光源に、影確認用の斜光を補助にするのが目安です。

塗装ブースの設置と静音化

ダクトは最短で曲げを少なくし、窓パネルの隙間はスポンジで塞ぎます。ファンの共振はゴム脚やマットで減衰できます。静音が取れると希釈の調整音やエアの脈動が把握しやすく、失敗の芽を早く潰せます。

コンプレッサーとレギュレーター

0.05〜0.12MPaの範囲で微調整できるモデルが扱いやすい傾向です。連続吐出時の発熱と圧力降下を把握し、休止を計画に組み込みます。水抜きはホース基部に加え、手元側にも用意すると安定します。

ハンドピースの口径と運用

0.2〜0.3mmを基準に、広い面は0.3、細部は0.2が扱いやすいです。ニードルストッパーで吐出量を事前に限定し、毎回の試し吹きで画角を体に覚えさせます。

安全と消耗品

有機溶剤対応マスクと手袋は早い段階で慣れておくと集中が切れません。綿棒や面相筆、キムワイプは工程ごとに用途を分け、アルコールとラッカー薄め液を混同しない置き方にします。

注意:換気が弱いと艶引きや白化が増えます。気温が低い日は暖房で室温を整え、湿度が高い日は作業量を絞ると安定します。

  1. 机上のゾーニングを3分割に決める
  2. ブースの排気経路を最短に調整する
  3. 手元に水抜き、足元に本体レギュレーター
  4. 試し吹き紙は常に新しい面を使う
  5. 終わりにノズルを分解せずに洗浄→翌朝点検
  • 照明は昼白色主体+斜光補助で色転びを抑える
  • ニードルストッパーで吐出量を再現しやすくする
  • 水抜きは2段構えにして脈動と水滴を抑える
  • 有機溶剤マスクは規格対応を選ぶ
  • 騒音はマットと距離で体感負荷を軽くする
  • 試し吹きの紙は塗面と同距離に置く

下地処理の勘所:傷管理と洗浄の順序

下地は完成後の質感を決める土台です。ゲート処理とパーティングライン(型の合わせ目)を整え、洗浄で油分を抜きます。ここで焦ると深い傷が残り、サフ後に段差が浮きます。小さな工程を丁寧に割り付け、負荷を一箇所に集めないことが安定の近道です。

仮組みと合わせ目処理

仮組みで可動と勘合を確認してから、接着が必要な合わせ目を先に処理します。固定が必要な箇所は塗り分けの窓を残し、後で差し色が入る面は段差を避ける構成にします。

ゲートとパーティングライン

ニッパーは2度切りで白化を抑え、刃先は常に良好な面に向けます。ペーパーは#600→#800→#1000を基準に、最終はスポンジやクロスで均します。角は丸め過ぎると情報が消え、スミ入れの乗りが落ちます。

洗浄と油分除去

中性洗剤や専用クリーナーで超音波洗浄があると効率的ですが、手洗いでも十分です。乾燥はホコリの少ない場所で自然乾燥し、エアで飛ばすときは油分の無い手元エアを使います。

失敗しやすい点と回避策

  • 深いえぐれ傷:削り過ぎのサイン。番手を1つ戻して広い面で馴染ませる
  • 白化:刃の入りが深い。2度切りとナイフ面取りで回避
  • サフで段差出現:広く当てずピンポイント修正→再サフ
  1. 仮組みで勘合調整→塗り分けの境界をメモ
  2. 合わせ目は接着→硬化→段差削り→溝再生
  3. ゲートは2度切り→面取り→番手上げで均す
  4. 中性洗剤で洗浄→自然乾燥→手油を避けて保管
用語の短解説

  • パーティングライン:金型の継ぎ目に生じる筋
  • えぐれ:局所的に深い削り跡が残る状態
  • 番手:サンドペーパーの粗さ番号
  • 勘合:パーツ同士が正しくはまる具合
  • 面取り:角を軽く落として欠けを防ぐ処理

ガンプラの全塗装工程を設計する:サフと色設計

色は下地と光で見え方が変わります。まずはサーフェイサー(下地塗料)で面の傷を可視化し、配色の狙いを置きます。黒立ち上げやグレー基調、白サフの明度優先などの手法は、最終艶と質感に直結します。ここでは「狙い→手段→検証」を一連で回します。

サーフェイサーの使い分け

黒は色の深みを引き、白は明度を底上げし、グレーは中立の確認台になります。厚塗りは情報を埋めるので、2〜3回の薄い往復で十分です。乾燥後に400〜600番のスポンジで軽く均すと、次の色が安定します。

カラープランと塗り分け順

明度差が近い隣接色は、境界が曖昧になりやすいです。先に暗い色を置いて、後から明るい色で被せると境界の管理がしやすくなります。金属色は最後に寄せ、粉砕顔料の粗さで隣接面に移るリスクを避けます。

マスキング設計

広い面→境界→スポットの順で負荷を分散します。曲面は細切りテープで半径を刻み、段差は境界に向けて薄く吹くと目立ちにくくなります。

狙い 下地サフ 立ち上げ 留意点
重厚感 暗色→中間 艶引き対策に薄吹きを重ねる
清潔感 淡色→中間 透け回避に下地を均一化
情報確認 グレー 中間→暗色 傷の拾い直しに向く
メリット

  • サフで傷の見落としが減る
  • 塗り分け順が定まりマスキングが簡素化
  • 色の試写で最終艶の想像がしやすい
デメリット

  • 工程が増え時間配分が必要
  • 厚塗りでディテールが曇る恐れ
  • 色替え時に洗浄の手間が増える
  • サフは2〜3回の薄吹きで面を均一化
  • 隣接色は明度差を意識し境界の見やすさを確保
  • 金属色は最終盤に回し粉じん移りを回避
  • 曲面は細切りマスキングで半径を刻む

吹き付けの基本:希釈・圧力・レイヤー設計

仕上がりの差は、希釈と圧力、距離と速度の組み合わせで生まれます。塗料ごとに“気持ちよく乗る点”があり、そこに寄せると色ムラやオレンジピール(柑橘皮状の凹凸)が減ります。ここでは実用域の目安を置き、再現性を高めます。

希釈と圧力の目安

ラッカー系は1:1前後から始め、0.08MPa付近で様子を見るのが扱いやすい傾向です。広い面はやや希釈を上げ、圧力も少し上げて霧を細かくします。細部は希釈を下げて乗りを強め、圧力も下げてにじみを抑えます。

吹き付けの順序設計

最初は“砂吹き”で足場を作り、半乾きで“本吹き”に移ります。角と溝を先に、平面を後に回すと回り込みが安定します。境界は手前から奥に向けて軽くかけ、段差の段丘化を避けます。

乾燥とインターバル

層間は5〜15分が目安ですが、湿度と温度で伸縮します。触れない距離から光を斜めに当て、艶の変化と曇りで乾きを判断します。無理をせず、次の色替えに時間を振り向ける方が総合的に早く終わります。

  • 希釈1:1・0.08MPaから入り、用途で微調整
  • 角→溝→平面の順で回り込みを安定
  • 層間は5〜15分、無理をせず乾きを待つ
  • 境界は手前から奥へ薄く重ねる
FAQ
Q. オレンジピールが出やすいのは?

A. 距離が近すぎる、希釈過多、風速不足が要因です。距離を5〜10cmに調整し、圧力を少し上げて霧化を促すと和らぎます。

Q. ざらつきが残るのは?

A. 乾燥が早すぎるサインです。距離を近づけるか希釈を下げ、半艶状態で次層を重ねると馴染みます。

Q. にじみを抑えるには?

A. 吐出量を絞り、圧力を下げて近距離で薄く刻みます。境界に対して平行に動かし、止め吹きを避けます。

  • 最初は砂吹きで足場→半乾きで本吹きへ移行
  • 広面は希釈と圧力をやや上げ霧を細かくする
  • 細部は希釈低め圧力低めでにじみ抑制
  • 光を斜めに当て乾きの艶変化を確認

仕上げ三点:スミ入れ・デカール・トップコート

色が乗ったら情報を整理します。スミ入れで面の輪郭を引き、デカールで記号情報を置き、トップコートで艶と保護を整えます。順序と乾燥を守ると、落ち着きのある仕上がりになります。

スミ入れの基礎

エナメル系は流動性が高く、パネルラインに沿って走ります。はみ出しは専用薄め液で拭き取り、角だけに色が残る“縁のこし”を目指すと自然です。割れ防止に内側からの力をかけない扱いが安心です。

デカールの貼り方

位置決めは弱めの軟化剤で滑らせ、気泡は綿棒で外へ送ります。段差に跨る場合は、乾燥後に極細の切れ目を入れて再度軟化させると定着します。

トップコートの選択と艶設計

つや消しは情報を均し、半つやは金属や成形感を残し、つやありは重厚感を引きます。艶を面ごとに変えると、同じ色でも立体の密度が見えやすくなります。
デカール前に一度クリアで面をならすと、銀浮きが減って定着が安定しました。面倒でも一手間で仕上がりが変わると感じます。

  • スミ入れは“縁のこし”で自然な陰影を狙う
  • 段差越えのデカールは切れ目→再軟化で密着
  • 艶は面ごとに設計し立体感を育てる
見え方 適性部位 注意
つや消し 情報が均一 外装広面 白化に注意、薄く重ねる
半つや 質感が残る 関節・武装 段差でムラが出やすい
つやあり 重厚感 装甲の一部 埃の付着に敏感

再組立とチェック:可動・干渉・保管の流れ

最後に組み直しを行い、可動域で塗膜が削れないかを点検します。乾燥は“触れる”と“完全硬化”を分けて考え、無理な力を避けます。完成後は保管と撮影で締めくくると、次の制作に資産が残ります。

組立前の検品

軸と受けに塗料が噛んでいないか、ピンに厚塗りがないかを確認します。干渉が疑わしい箇所は先に紙やすりで軽く当て、動かさずに調整します。

可動と干渉の調整

擦れやすい面はエッジをほんの少し丸めると、接触が線から面に変わり削れが減ります。見えない内側に薄くPTFE系潤滑を使う手もありますが、外側に出る恐れがある場面は避けます。

保管と撮影

埃の少ないケースで保管し、撮影は拡散光で面の情報を拾います。小さなレフで影を起こすと立体感が素直に出ます。画像は次の色設計の資産になります。

  1. 塗膜の厚みが干渉しないか軸受けを点検
  2. 擦れる箇所は内側のエッジを軽く整える
  3. 完全硬化までの扱いは最小限にする
  4. 保管ケースと乾燥剤を用意して埃を減らす
  5. 撮影で面の情報を記録して次に活かす

注意:完全硬化前の可動テストは、動作の最終角度まで回し切らない運用が安全です。塗膜が柔らかい時期の“温存”は後の艶にも効きます。

  • 軸と受けの噛み込みは先に軽く当てて解消
  • 内側の面取りで接触を線→面に変えて摩耗抑制
  • 撮影の拡散光で面情報を記録し次回に活用

まとめ

全塗装は「環境→下地→サフ→色→仕上げ→再組立」の順で段取りを固定すると迷いが減ります。各段での目安を少しずつ積み上げると、仕上がりが安定していきます。
最初は工程を小さく区切り、乾燥と点検に時間を回すことが近道です。今日は環境と下地だけ、次はサフと色設計という進め方でも十分に楽しめます!
完成後の記録は次の配色の助けになります。焦らず段差と艶の変化を観察し、小さな成功を積み上げていきましょう。