アトラスガンダムを塗装で仕上げる|配色と質感の基準を押さえて進める

特徴的なラインや白主体の装甲をきれいに見せたい、けれど黄色の差し色や黒いフレームがにじんだり埋もれたりしがち。そんな迷いは少なくありません。この記事では、配色設計→下地→白面の均し→フレームの質感→アクセント色→仕上げの順に、アトラスガンダムを題材に手順と基準を一本化します。
各章で具体的な数値やチェックを挟み、マスキングや希釈の迷いを減らします。読み終えるころには、自分の環境で再現できる言葉と工程に置き換わり、作業時間が見通せるようになります。

  • 白と黒と黄色の関係を設計段階で決める
  • 下地色で温度感を調整して白の黄ばみを防ぐ
  • 白面は「段階の薄塗り」で均一に整える
  • フレームは半艶と粒子で質感を描き分ける
  • 黄色は彩度と被膜厚の両面からにじみを抑える
  • トップコートと擦れ対策で可動を長持ちさせる

アトラスガンダムを塗装で仕上げる|全体像

最初に全体の設計図を言語化すると迷いが減ります。白が主役、黒が輪郭、黄色が視線誘導という三役のバランスを軸に据え、「どの面を沈め、どの線を出すか」を決めてから道具と手順を選びます。ここでは配色の温度感、下地の色、マスキング順、乾燥時間の目安を揃え、作業の再現性を高めます。

観察と分割の初動で“勝ち筋”を作る

組立説明書を眺めるだけでなく、パーツの裏側から光を当てて段差やアンダーカットを確認します。白面は継ぎ目が目立ちやすいので、合わせ目消しとパーティングライン処理の優先順位を最初に決めます。
黄色の細帯は塗り分けかデカールかを面ごとに選択し、黒フレームは半艶で輪郭を引き締めます。判断を先に言葉にしておくと、途中の迷いをチェックリストで捌けます。

配色設計の原則を温度感で決める

白を寒色寄りに振ると金属感のある印象、やや暖色ならミリタリー寄りの落ち着きが出ます。黄色は高彩度だと玩具感が出るので、白に対して半歩だけ彩度を落とすと上品に締まります。黒はフレーム・関節・ノズルで艶度を段階化し、面の密度を操作します。
この三点の“温度”を最初に決めると、下地とクリアの選択が自然に決まります。

下地色と層構成を図にする

白はグレー寄りのサフ、黄色は明るいベージュ下地、黒は黒サフかダークグレーで深みを出します。白面に黒サフ直塗りは透けやムラの原因になりやすいので避けます。
層構成は「サフ→色→クリア」で一本化し、メタリックやパールは別工程でまとめると失敗が減ります。

マスキング順と境界の見せ方

黄色は後乗せが基本ですが、段差の出る面は先に黄色を塗ってからマスキングし、白を重ねてフラットに見せる方法が有効です。境界は0.4〜0.7mm幅のテープを使い、曲率に合わせて切り分けます。
黒は最後に入れるとにじみが目立つため、白との境界はラッカー系で硬めに仕上げます。

時間配分とテストピース

テストピースに白・黒・黄色を並べ、0.1/0.12/0.15MPaで線と面の両方を試します。乾燥は20〜25℃で30〜60分を目安に、湿度が高い日は延長します。
「今日は白と黄色の下地まで」など、工程を日ごとに切ると集中が保てます。

手順ステップ:設計から下地までの流れ

  1. 完成イメージを暖寒で言語化して三役の温度を決める
  2. 白・黒・黄色の下地色と艶度をメモに落とす
  3. 分割と合わせ目の優先度を決め、先に処理する
  4. テストピースで圧と希釈の基準を作る
  5. 本体はサフ→軽研ぎ→透けチェックの順で前進する

ミニ用語集

  • 温度感:色みの暖寒の手触り。白やグレーでも変化します。
  • 層構成:サフからクリアまでの積層設計。順番で仕上がりが安定。
  • 半艶:光をやわらげる艶度。面の密度をそっと上げます。
  • にじみ:境界での染み出し。テープ幅と塗り重ねで抑えます。
  • 透け:下地が見える状態。白面は下地選びで回避します。

注意:白面の研ぎ過ぎでエッジが丸くなると情報量が減ります。エッジはスポンジやすりの当て方を浅くし、面の“シャープさ”を守ります。

下地とサーフェイサーを選び塗膜の土台を整える

仕上がりは下地で七割決まります。白は透けに、黄色は発色に、黒は深度に敏感です。ここではサフの色味と番手、研ぎの粒度、乾燥と脱脂のタイミングを揃え、“土台の均し”を標準化します。

素体処理と合わせ目の段取り

ゲート跡は#400→#600→#800の順で均し、白面は#1000で軽く整えます。流し込み接着で合わせ目を消し、硬化後に再刻線を入れて情報量を戻します。
脱脂はアルコール系を薄めて速やかに、こすりすぎると摩擦熱で表面が荒れます。

下地色の使い分けで温度を操る

白面はライトグレーのサフ、黄色面はホワイト寄りのベージュ、黒面はブラックまたはダークグレーで深みを出します。寒色寄りにしたいときは白面をクールグレー、暖色寄りはウォームグレーに振ると全体の統一感が変わります。

研ぎ出しとピンホール対策

サフ後のピンホールは希釈した同色サフを点付けで埋め、乾燥後に#1000で慣らします。面のうねりは当て木で直線を意識し、スポンジは曲面だけに使い分けます。
研ぎ出し過多は透けの原因なので、必要な面だけ薄く当てるのが安全です。

用途 推奨下地色 番手の目安 狙い
白装甲 ライトグレー #800→#1000 透けと黄ばみ抑制
黄色アクセント 薄ベージュ #800 発色とにじみ防止
黒フレーム ブラック/ダークグレー #600→#800 深度と艶度調整
メタル部 光沢ブラック #1000 粒の寝と映り込み
クリア部 無色下地 なし 透明感維持

チェックリスト:下地で揃える要点

  • 白面の透けチェックを光に透かして行う
  • 黄色面は段差を埋めてから薄く発色を狙う
  • 黒面は艶度の最終イメージをメモに残す
  • ピンホールは点で埋めて面で削らない
  • 乾燥は温湿度を記録し再現性を持たせる
  • 脱脂は手短に、摩擦熱を避ける
  • 研ぎは当て木で直線を守る

ライトグレーの下地に変えただけで白が落ち着き、黄色の一回目で狙いの彩度に届きました。面を触る回数が減った分、仕上がりの荒れも少なくなります。

白主体の面を均しエッジを立てる吹き方

アトラスの印象は白面の均一感で決まります。ざらつきや斑を避けるには、圧と希釈、距離、速度を段階で合わせるのが近道です。ここでは「薄く→重ねて→半艶で整える」の流れを具体化します。

白を黄ばませないための温度と距離

0.10〜0.12MPaで希釈1.2〜1.5倍、距離は5〜7cmから。乾燥は送風弱で、熱風は黄ばみの元になるため避けます。
一度で白くしようとせず、三段階でじわっと上げると面が均一に見えます。

陰影の階調を面内で仕込む

白単色はのっぺりしやすいので、下地のグレーを残す感覚で周辺だけ一段薄く吹き、中心へ向けて被膜を厚くします。
のちに入るスミ入れが少量で済み、情報量が過剰になりません。

粒子感を抑えクリアでまとめる

半艶クリアで白面を軽く一体化し、微細なざらつきを埋めます。完全な艶消しは粉っぽく見えることがあるため、半艶で止めると立体の情報が保たれます。
乾燥後は指ではなく柔らかい布で触れて、皮脂の移りを避けます。

メリット/デメリット早見

薄く重ねる

  • ムラが出にくく均一に見える
  • 時間がかかるが失敗が少ない

一気に白くする

  • 短時間で覆える
  • ざらつきとオーバーが出やすい

Q&AミニFAQ

Q. 白が粉っぽく見えるのは?
A. 乾燥が早すぎるか艶消し過多です。半艶で薄くまとめると粒子感が収まります。

Q. 斑点が出たら?
A. 一度止め、希釈を上げて距離を5〜7cmに戻します。下地の研ぎ直しは最小限にします。

Q. 黄ばみ対策は?
A. 熱風を避け、光源の色温度も確認します。クール寄りの下地が効きます。

  • 白の基準圧:0.10〜0.12MPa
  • 希釈:1.2〜1.5倍から
  • 距離:5〜7cm
  • 半艶クリア:軽く一度で止める
  • 乾燥:送風弱、温風は避ける
  • 触れる前に手袋を使う

フレームと黒系の質感を段階で描き分ける

黒は一色に見えて、艶と粒子で驚くほど表情が変わります。関節やフレーム、ノズルや武装で艶度を振り分け、「半艶・艶消し・メタル」の三階調を作ると白面との対比が生きます。

黒の三段階設計

フレームは半艶で密度を上げ、関節は艶消しで動きを軽く、ノズルは光沢下地にメタルで締めます。
同じ黒でも艶が違えば面の役割が分かれ、全体の読みやすさが上がります。

メタリックの使い分け

鉄は青みの強いダークアイアン、アルミは明るいシルバー、ガンメタは中庸でつなぐ役です。粒が立ちすぎたらクリアで軽く寝かせます。
塗り過ぎは白面を食うので、点で置いて線でつなぐ感覚が心地よいです。

ウェザリングは軽く添える

スミ入れは暖寒を本体に合わせ、エッジのドライブラシは最小限に。
白面とのコントラストを壊さない範囲で、黒側の情報量を少しだけ増やします。

  1. 黒の用途を三つに分けて艶度を決める
  2. メタル色は下地の光沢で映り込みを作る
  3. スミ入れは色温度を本体に合わせる
  4. ドライブラシはエッジのみ軽く当てる
  5. 組立前に擦れやすい部位をメモする
  6. 可動試験で当たりを確認し微修正する
  7. 最後に半艶で統一感を整える
  8. 乾燥時間を厳守して指触を避ける

よくある失敗と回避策

黒一色で潰れる:艶度の段階を作り、半艶をベースに配分します。
メタルが浮く:光沢ブラックの下地に乗せ、クリアで寝かせます。
スミ入れが強すぎる:色温度を合わせ、薄めて二回で追い込みます。

ミニ統計:仕上げ後の満足度に効いた要因

  • 艶度の段階化をした個体:見栄え向上の自己評価が高い
  • メタル部だけ下地光沢を分けた個体:立体感の改善が顕著
  • 可動試験を前倒しした個体:擦れの発生率が低い

黄色アクセントと機能色をにじませず通す

黄色は視線を導く矢印です。発色を確保しつつ、にじみと段差を抑えるには順番と厚みの管理が要になります。ここでは「先に塗る面」と「あとから貼る面」を分け、彩度と被膜厚をコントロールします。

黄色の彩度は半歩落として面に馴染ませる

白と並ぶ黄色は高彩度だと浮きます。薄ベージュ下地に黄色を二段で重ね、最後は半艶で整えると、主張しすぎず視線が流れます。
隣接が黒なら彩度を少し戻し、コントラストで締めます。

デカールとの整合を考えて選ぶ

細帯は塗装が理想ですが、曲率の強い箇所はデカールのほうが滑らかに回ります。
塗装とデカールがぶつかる箇所は、段差を先に整えておくと後処理が簡単です。

マスキング境界の段差を消す

黄色→マスク→白の順で重ねた面は、半艶クリアを薄く挟んで境界を馴染ませます。
無理に削ると色が割れるため、塗膜の“面で均す”発想が安全です。

  • 黄色は薄ベージュ下地で一段目を軽く通す
  • 二段目で彩度を決め、半艶で統一
  • 曲率の強い箇所はデカールを併用
  • 境界はクリアで面をならす
  • 隣が黒なら彩度を少し戻す
  • 貼り物の位置基準を先に鉛筆で印す
  • クリア前に埃をブロアで払う

手順ステップ:にじみを抑える黄色の流れ

  1. 薄ベージュ下地で段差を均す
  2. 黄色一度目を薄く通し、乾燥を待つ
  3. 必要なら二度目で彩度を調整する
  4. 境界テープを0.4〜0.7mmに切って沿わせる
  5. 白を重ね、半艶クリアで面を一体化する
  • 黄色の基準圧:0.10〜0.12MPa
  • 希釈:1.3〜1.6倍
  • テープ幅:0.4〜0.7mm
  • 乾燥:20〜25℃で30〜60分
  • 仕上げ:半艶で段差を馴染ませる

仕上げと可動部の擦れ対策で長持ちさせる

組み上げてからのトラブルは塗膜が泣きます。トップコートと可動検証を前倒しで入れ、当たりを見つけたら小修正で守ります。写真での見え方まで含めて、“最後に整える仕事”をまとめます。

トップコートの選び方

白面は半艶で情報を残し、黒は半艶と艶消しを使い分けます。黄色は光沢を落とし過ぎないほうが視線が流れます。
艶度は一括ではなく面ごとに分け、最後に全体を微調整します。

擦れに強い塗膜の作り方

当たり面は先に薄くクリアを敷いておき、組立後は可動域で干渉していないかを確認します。
塗膜が強いのは薄く均一な層です。厚塗りで強度は上がりません。

写真での見え方を最終チェック

白は照明で飛び、黒は沈みます。スマホでも良いので白と黒のディテールが同時に見える露出を探し、艶の段階が狙いどおりか確認します。
気になる面だけ局所的にクリアで整え、全体の空気を揃えます。

Q&AミニFAQ

Q. どの艶でまとめる?
A. 白は半艶、黒は半艶と艶消しを混在、黄色は半艶寄りが無難です。面ごとに最適を選びます。

Q. クリアの白化が怖い
A. 湿度の高い日は避け、薄く重ねます。白化が出たら時間を置いてから温風弱で回復を試みます。

Q. 擦れを完全に防げる?
A. 可動は摩擦が出ます。干渉を避け、薄い塗膜で“強い層”を作るのが現実的です。

比較ブロック:まとめ方の違い

一括で艶を合わせる

  • 作業が速い
  • 面によって情報が死ぬ可能性

面ごとに艶を分ける

  • 情報量を保てる
  • 手間はかかるが精度が上がる
項目 基準 メモ 確認方法
艶度 白=半艶 粒子感抑制 写真で白飛び確認
黒の分け 半艶/艶消し 役割で配分 反射で段階を見る
黄色 半艶寄り 視線誘導 露出変化で確認
擦れ 薄膜優先 干渉点回避 可動試験
最終前に除去 ブロア必須 逆光確認

まとめ

設計段階で「白を主役、黒で輪郭、黄色で視線」を言語化し、下地の温度と層構成を決めれば、アトラスガンダムの塗装は安定します。白面は薄く三段で均し、半艶で粒子を整えると情報が過不足なく伝わります。黒は艶度の段階化で役割を分け、メタルは点で置いて線でつなぐと締まりが出ます。
黄色は薄ベージュ下地から二段で発色させ、境界はクリアで面を馴染ませます。仕上げは面ごとに艶を分け、可動の当たりを先に潰すと長持ちします。今日できるのは、テストピースで圧と希釈の基準を作ることです。小さな基準が積み重なれば、狙いどおりの白と輪郭が手に入ります。