本稿では「汚い」の正体を型で捉え、再現しやすい流れに並べ替えます。迷ったら原因の帯へ戻り、次の一手を小さく置き直すだけで前へ進めます!
- 汚れ方は型に分けると対処が見えます。
- 下地の艶はスミの入り方と拭き取りを左右します。
- 塗料と溶剤は扱いやすさを基準に選ぶと安定します。
- 入れ方と拭き取りは“向き”と“待ち”で変わります。
- モールドの深さが情報量と滲みを決めます。
- 仕上げで固定と見せ方を整えると印象が締まります。
ガンプラのスミ入れが汚いと感じたら|初学者ガイド
最初に「汚い」の中身をほどくと、焦点が定まります。にじみ、ムラ、拭き残し、濃度過多、モールド浅さなど、症状は似ていても対処が異なります。ここでは観察の観点をそろえ、原因の帯を見つけやすくします。
にじみ型:境界から色が回り込む
面側へ色が広がるのは、下地の艶と塗料の粘度、量の三要因です。艶が低いほど毛細管が面に拡散しやすく、粘度が低すぎると広がります。量は“点置き”から始めると落ち着きます。
ムラ型:溝の中で濃淡が揺れる
溝が浅い、途切れる、底が荒れていると、溜まりと透けが交互に出ます。拭き取りで溝の上も薄く削れてしまうと、線の太さがまばらになります。
拭き残し型:周辺に薄いベールが残る
拭き方向が一定でない、拭き取りのタイミングが早すぎる/遅すぎる、下地がザラついていると、薄い色の膜が周囲に残ります。綿棒や布の選び方でも差が出ます。
濃度過多型:線が太く重く見える
色が濃すぎると“線”ではなく“帯”に見えます。全体のコントラストに対して強すぎる色は、情報量の過多として認識され、汚れた印象につながります。
モールド浅さ型:線がにじみやすく途切れる
溝が浅い/広い/角が鈍いと、毛細管が安定せずに広がります。彫り直しやシャープ化で“水路”を整えると、同じ塗料でも挙動が変わります。
注意
症状を混同しないことが近道です。にじみと拭き残しは似て見えても、前者は“入れ方と下地”、後者は“拭き取りと下地”の見直しで扱います。
手順ステップ(切り分けの流れ)
1) どこが汚く見えるかを言葉にする → 2) 拡大/斜光で観察 → 3) 症状を型に当てる → 4) 原因の帯(下地/塗料/入れ方/モールド/仕上げ)を特定 → 5) 小範囲で検証
ミニチェックリスト
□ 症状はどの型か言えるか
□ 下地の艶を把握したか
□ 溶剤の拭き方向は一定か
□ 線の太さと色の強さは場に合うか
□ モールドの深さは足りているか
下地の艶を整えて汚れの原因を前段で減らす
スミ入れ前の表面状態は、入れ方と拭き取りの難易度を左右します。ここでは艶の作り方、表面の清掃、デカールやトップコートとの順序を整理し、前段での失敗を減らします。
艶づくり:半つや〜光沢で“滑り”を確保する
ザラついた面では色が面へ広がりやすく、拭き残しも生まれがちです。半つやから光沢に寄せると拭き取りは安定します。最終はつや消し仕上げでも、スミ入れの直前だけは“滑る面”に整えるのが目安です。
表面清掃:粉と皮脂を取り除く
研磨粉や指の油分は、にじみと拭き残しの増幅要因です。柔らかい布やエアダスターで軽く整えるだけでも、毛細管の動きが安定します。
順序設計:デカールとの前後関係
デカールの段差や銀浮きは拭き取り時の引っ掛かりを生みます。スミ入れは“段差を減らした後”に置くと、周囲に残る薄膜を抑えられます。迷ったら、光沢面→デカール→軽く光沢→スミ入れの流れが扱いやすいです。
ミニ用語集
半つや:光をやわらかく返す中程度の艶。
銀浮き:デカール下に空気が残り白っぽく見える現象。
斜光:面に沿う角度からの光。凹凸が見つけやすい。
よくある失敗と回避策
1) つや消し面で拭き取りが引っ掛かる → 一時的に半つやへ。
2) 研磨粉がにじみを誘発 → 清掃を工程表に入れる。
3) デカール段差で薄膜が残る → 軽い光沢で段差を均す。
ベンチマーク早見
・スミ入れ直前は“滑る面”。
・清掃は粉/皮脂の除去を最優先。
・デカール後に薄く光沢を挟むと拭き取りが安定。
塗料と溶剤の選び方:扱いやすさで安定を作る
同じスミ入れでも、塗料の種類や溶剤で挙動は変わります。ここでは選択の軸を整理し、にじみ/拭き取り/定着のバランスを取りやすくします。
塗料タイプ:線の出方と修正のしやすさ
流動性の高いタイプは細い溝をよく走りますが、面にも広がりやすい傾向があります。拭き取りで戻しやすいものは練習域で扱いやすく、部分修正の負担が軽くなります。
溶剤の拭き取り特性:強さと揮発のバランス
溶剤は強すぎると下地へ影響し、弱すぎると薄膜が残ります。揮発が速いと作業は軽快ですが、拭き取りの猶予は短くなります。小面積で相性を確かめると無理が減ります。
色選択:コントラストと“帯の強さ”
黒一択ではなく、周囲とのコントラストを基準にすると重くなりにくいです。白系や明色にはグレー、濃色には茶やダークグレーなど、“線が語り過ぎない色”を選ぶと自然に見えます。
比較ブロック(選び方の軸)
修正のしやすさ:拭き取りの猶予があるか。
走り方:細溝で安定するか。
下地への影響:艶や塗膜を荒らしにくいか。
ミニ統計(体感目安)
・濃度が高いほど線は太く重くなりやすい。
・揮発が遅いほど拭き取りの猶予は伸びる。
・艶が高いほどにじみは抑えやすい。
- 扱いやすさを主軸に塗料を決める
- 溶剤の強さと揮発を小面積で確認する
- 周囲の明度に合わせて色味を調整する
- 濃度と量は“点置き”から微調整する
- 試し拭きで薄膜の残り方を確かめる
入れ方と拭き取り:向きと“待ち”で汚れを抑える
入れ方と拭き取りの所作は、にじみや拭き残しに直結します。ここでは毛細管の使い方、拭き取りの道具と方向、乾燥/ドライの待ち時間を具体化します。
毛細管の使い方:点置きと距離感
溝の分岐や端から“点置き”で流すと、過量を避けられます。筆先の量は一度ティッシュで整えると安定し、距離を詰めすぎないことで面への回り込みを防げます。
拭き取りの道具と方向:面の流れに沿わせる
綿棒/柔らかい布/平筆など、道具の接触面で結果が変わります。拭き取りは基本的に溝と直交する方向へ軽く滑らせ、同じ向きを繰り返すと薄膜の縞を避けやすいです。
乾燥とドライ:待ち時間の配分
入れた直後は流動が強く、拭き取りで線まで消えやすくなります。短時間の“半ドライ”を置くと、線は残しつつ周囲だけ軽く戻せます。時間は環境に左右されるため、小面積で基準を作ると安心です。
表(拭き取り道具の目安)
| 道具 | 特性 | 向き | 注意 |
|---|---|---|---|
| 綿棒 | 点の当たりで局所調整 | 直交方向 | 繊維残りに注意 |
| 柔らかい布 | 面で均一に薄膜を戻す | 面の流れ | 力が強いと線も薄まる |
| 平筆 | 溶剤を最小量で当てる | 直交/並行 | 含みすぎに注意 |
Q&AミニFAQ
Q. すぐ拭くと全部消える?
A. 半ドライを待つと線が残り、周囲だけ戻せます。
Q. 拭き取り方向は迷う?
A. 基本は溝と直交、面の流れに沿わせると筋が出にくいです。
拭き取りを急いでいた頃は失敗が続きましたが、“半ドライを待つ”だけで薄膜が落ち着き、やり直しが減りました。小さな待ちが大きな安定に変わります。
モールドを整える:彫り直しとシャープ化で走りを安定
スミ入れは“水路”の品質に依存します。ここでは彫り直しの基準、角の処理、パネルごとの差別化を扱い、同じ塗料でも汚れにくい状態を作ります。
彫り直し基準:深さ/幅/連続性
浅く広い溝はにじみの温床です。深さは薄い塗膜の下で線が見える程度、幅は線として成立する最小限を目安に整えると、毛細管が安定します。
面取りと角の処理:線の“立ち”を決める
角が鈍いと線がぼけます。角はシャープに、面は滑らかにの分担を意識すると、同じ色でも情報が整理され、汚れに見えにくくなります。
パネルごとの差別化:全部を同じ強さにしない
すべて同じ濃さで入れると情報が飽和します。視線の集まる帯はやや強く、背景帯は弱くと、強弱をつけるだけで自然に見えます。
- “水路”の連続性を最優先に整えます。
- 角は立て、面は滑らかに分担します。
- 強弱をつけて情報の飽和を避けます。
注意
彫り直しはやり過ぎないのが目安です。広げすぎた溝は線が太く見え、重い印象につながります。
手順ステップ(モールド調整)
1) 斜光で溝の連続性を確認 → 2) 途切れや浅さを小さく補修 → 3) 角を軽く立てる → 4) 清掃して粉を除去 → 5) 小面積で走りを試す
仕上げで定着と見せ方を整える:固定/保護/統合
スミ入れがきれいでも、仕上げで印象が崩れることがあります。ここではトップコートの選び方、割れリスクの管理、写真写りまでの“見せ方”を最後にまとめます。
トップコート:固定と統合の役割
光沢は発色を、半つやはまとまりを、つや消しは情報の統合を助けます。線が強すぎると感じたら半つや〜つや消しへ寄せると、全体の情報がなじみます。
割れリスク管理:可動部と厚みの配慮
関節や圧がかかる部位は塗膜が割れやすい帯です。厚塗りの上に溶剤を重ねると負担が増えます。可動部は薄く、待ち時間は長めを目安にすると安心です。
写真写りの最終調整:光と角度
完成後の印象は光で変わります。斜光で線が立つ角度を探し、全体が重く見えたら背景を明るくしてコントラストを調整すると、線の情報が整理されます。
ミニチェックリスト
□ 仕上げの艶は意図と合うか
□ 可動部の厚みは控えめか
□ 写真の光と角度で線が潰れていないか
比較ブロック(艶の効果)
光沢:色が鮮やか、線は強く見える。
半つや:まとまりやすい、中庸。
つや消し:面の情報が統合、線はやや穏やか。
ミニ統計(体感目安)
・線の強さは“艶×色×太さ”で決まる。
・可動部の失敗は厚みと待ち不足が多い。
・背景の明度で重さの印象は変わる。
まとめ
「汚い」と感じるスミ入れは、下地の艶、塗料と溶剤、入れ方と拭き取り、モールドの水路、仕上げの統合という五つの帯に分けると見通しが立ちます。
にじみ型/ムラ型/拭き残し型/濃度過多型/モールド浅さ型のどれに当てはまるかを最初に言語化し、前段の艶づくりと清掃で負担を減らし、色は“語り過ぎない濃さ”を選ぶと落ち着きます。
入れ方は点置きと半ドライの待ち、拭き取りは直交方向の軽い往復で薄膜を整えます。彫り直しは連続性と角の立ちを優先し、仕上げは艶で情報を統合します。工程を帯で見直すほど、同じ道具でも安定した線が戻ってきます。

