ガンプラの内部フレームを塗装で質感を高める|可動と色分けの現実解と段取り

外装は目を引きますが、稼働の印象は内部フレームの色と質感で大きく変わります。つやの配分や金属感の強弱を整えると、同じポーズでも密度が上がり、写真でも締まって見えます。とはいえ、内部は干渉が生じやすく、塗りの厚みや塗料の種類次第で動きが鈍ることもあります。
本稿は、可動を保ったまま内部フレームの見栄えを底上げするための段取りを、下地の選択、色設計、マスキングの考え方、乾燥の待ち方、組み上げと撮影、そして長期保管にまで広げて整理します。まずは「触れて動かす前提」の目線で、塗る場所と塗らない場所の線引きを決めるところから始めませんか?

  • 狙いの質感を一言で決める(重厚・精密・軽快)
  • 可動部は薄膜・低摩擦・高密着を優先
  • 下地は黒系かグレー系の二系で組む
  • 金属色は少量の色味で変化を付ける
  • 再組立の順序を紙一枚に書き出す

ガンプラの内部フレームを塗装で質感を高める|基礎知識

最初に全体像を描くと迷いが減ります。ここでは狙いの質感、可動と塗りの境界、素材別の注意点、安全と静音、作業時間の配分を俯瞰して、仕上がりと動きの均衡を取りにいきます。要点は薄膜密着クリアランスの三点です。

目標の質感を短い言葉で決める

「工具感のある鈍い金属」「精密機器風の微光沢」「軽快な樹脂骨格」など、完成の像を短文に落とすと塗りの選択がぶれにくくなります。重厚なら暗めの金属とマット主体、精密なら半艶中心、軽快ならグレー系で面の情報を残すと方向が揃います。

可動と塗りの境界線を引く

干渉しやすい摺動部、軸受け、ボールジョイントのソケットは塗らない、もしくは極薄で止めるのが安全です。見える面は塗って密度を上げ、隠れる面はプライマーのみに留めるなど、視点に合わせて線引きをすると動きが鈍りにくいです。

素材別の下準備:PS/ABS/POMの扱い

PSは一般的で扱いやすいですが、ABSは割れ対策として溶剤の強さを抑えると安心です。POM(ポリアセタール)は塗膜が乗りにくい代表格で、基本は未塗装運用か、密着材を試しても負荷のかかる面は避けるのが現実的です。

安全と静音の基準

室内での作業は換気と臭気対策を先に決めておくと気が楽です。塗装音やコンプレッサー音が気になる場合は、夜間は筆塗り中心に寄せるなどの運用切替も現実解です。養生は広めに取り、乾燥スペースを先に確保すると片付けが早まります。

時間配分と検査の挟み方

分解とゲート処理に30%、塗り本体に40%、乾燥と再組立に30%の配分を置くと、途中の焦りが減ります。要所で仮組み検査を挟み、干渉が出たら早い段階で当たりを取ると塗膜の剥がれを抑えられます。

注意:ABS関節へ強溶剤を厚く重ねると白化や割れの原因になります。薄く複数回が目安です。

  1. 完成像を短文で決める
  2. 塗る面と塗らない面を仕分ける
  3. 素材ごとの注意点を把握
  4. 換気と乾燥スペースを確保
  5. 仮組み検査を小刻みに挟む
チェックリスト

  • 摺動面に塗膜を乗せていない
  • 軸受けやソケットは薄膜か無塗装
  • ABSへ強溶剤の厚塗りを避けた
  • 乾燥までの置き場が確保できた
  • 再組立の順序を紙で可視化した

色設計と金属感の作り方:下地から重ねの順序

金属感は「下地の暗さ」「メタリック粒子の大きさ」「艶の調律」で決まります。ここでは黒/グレーの下地選択、金属色の微調整、差し色の配分で情報量を上げる手順を組み立てます。鍵は色相差艶差の二段構えです。

下地は黒系とグレー系の二本立て

黒下地は深い金属に寄せやすく、アイアンやガンメタの重さが出ます。グレー下地は粒子が素直に見え、軽めのスチール系に向きます。関節の中でも目立たせたい部位だけ黒、他はグレーと分けると奥行きが出ます。

金属色の微調整で差を作る

ガンメタに少量の青や紫を混ぜると冷えた鋼、カッパーに黒を加えると焼けの落ち着きが出ます。シルバーは粗い粒子よりも細かい粒子で面を整えると、内部フレームらしい密度に寄せられます。重ねは薄く複数回が目安です。

差し色と艶の配分

全身が同じ金属色だと単調になりやすいです。ピストン風の棒やロッドにだけ明るいシルバー、シリンダーの根元にカッパーを少量、基部は暗めのグレーといった差し色で視線誘導が生まれます。艶は半艶を基準に、基部はややマット、ロッドは高めに振ると落ち着きます。

黒下地のメリット

  • 金属色が引き締まる。
  • 影が強く密度感が出る。
  • 焼け色の乗せ替えが映える。
グレー下地のメリット

  • 粒子のムラが出にくい。
  • 軽やかな鋼表現に向く。
  • 上塗りの色幅を取りやすい。
下地黒
深い金属感へ寄せやすいベース。影が締まりやすい。
下地グレー
明るめで均一な粒子表現に向く万能ベース。
艶差
同系色のまま艶だけ変えて情報量を増やす手法。
差し色
目立たせたいパーツに限定して配色するアクセント。
薄膜重ね
一度に厚く乗せず、薄く複数回で肌を整える手法。

黒下地+ガンメタの腕関節に、ロッドだけファインシルバーを薄く。当たり前の構成ですが、写真での抜けが良くなり、外装の色数が控えめでも見映えが底上げされました。

研ぎ出しと質感コントロール:マット/セミグロス/グロス

内部フレームは光沢一辺倒にすると玩具的に見えやすいです。半艶を軸に、要所のグロスと広面積のマットで抑揚をつけると、実物感に寄ります。ここでは艶の設計、クリアの選択、研ぎのタイミングで質感を整える流れをまとめます。焦点は艶路線物性差です。

艶の設計図を作る

関節のベースは半艶、摺動を示したいロッドは高めの艶、広い骨格はマット寄りなど、部位ごとに艶を割り当てます。同じ色でも艶が違うだけで面の情報が変わり、視線が流れやすくなります。

クリアの選択と重ね方

筆塗り中心なら乾燥の早いクリアが扱いやすいです。エアで吹く場合は薄く数回、乾燥を挟みながら重ねると肌が乱れません。グロスは厚みが出やすいため、可動部には乗せすぎないのが安心です。

研ぎとリカバリー

ゴミ噛みは早めに見つけ、極細の研磨具で軽く均し、同じクリアで馴染ませます。艶を落としたい面はフラットクリアで薄く整えると、面の情報が立ちます。やり直しは範囲を最小限に絞ると他の面に影響しにくいです。

ミニFAQ

Q. テカりすぎる? A. ハイライトの面だけフラットを薄く。全体を落とすと情報が失われがちです。

Q. 粒子が荒い? A. 下地をグレーに変えるか、細粒子の金属色へ変更すると馴染みます。

Q. 乾燥に自信がない? A. 触る前に別パーツで指触テストを挟むと安心です。

よくある失敗と回避策

グロス厚塗りで動きが渋い→半艶へ置き換えて薄膜運用。

粉っぽいマットで白化→フラットの希釈を見直し、湿度の低い時間帯へ。

ムラが出る→乾燥を挟みながら薄く重ね、角で一度切る。

  1. 艶の割り当てを紙に描く
  2. クリアは薄く数回で厚みを抑える
  3. ゴミ噛みは早期に研いで馴染ませる
  4. 可動部は半艶以下で薄膜運用
  5. 最終に全体を俯瞰して艶を微調整

破綻しないマスキングと分解管理:再組立の再現性

内部フレームは小面の連続で、マスキングの精度が仕上がりを左右します。分解と管理、貼る順序、剥がすタイミング、そして再組立の再現性を担保する工夫を押さえると、歩留まりが上がります。肝は順序化識別です。

分解と管理の仕組み化

ランナー情報と部位をメモし、小袋やトレイで工程ごとに分けていくと迷いが減ります。ピン同士の相性はテープで対にしておくと再組立がスムーズです。可動方向の矢印を小さく書き添えるだけでも、戻す時のストレスが和らぎます。

マスキングの貼り順と剥がし順

広い面から狭い面へ、角は先に見切り線を作り、小片を重ねていきます。剥がしは塗料が柔らかい段階で角だけ立て、完全乾燥後に引き切ると段差が整います。微妙な境界はエナメルや極細ペンで補修すると綺麗におさまります。

再組立の再現性を高める

軸やピンの向きは写真で残し、仮組みで渋さを確認しておきます。干渉が出たら、見えない側の角を軽く面取りし、塗膜を削らずに済む工夫を優先すると歩留まりが上がります。

工程 道具 要点 つまずきポイント
分解 トレイ/小袋/メモ 相性を組で管理 左右の取り違え
マスキング 細切りテープ 角の見切り線を先に 角の浮き/滲み
塗り エア/筆/クリップ 薄膜を重ねる 厚塗りでの段差
剥がし ピンセット 半乾きで角だけ立てる 糊残り/塗膜剥離
再組立 写真/面取り工具 干渉は角の処理で回避 塗膜の傷
ミニFAQ

Q. 滲む? A. 角で細切り→面で大判の順。押さえは爪先で軽く。

Q. 糊が残る? A. 低粘着テープへ切り替え、剥がしは低角度で。

Q. 左右を間違える? A. 写真とメモの両建てが安全です。

可動部の耐久とクリアランス:擦れ・干渉・軸の対処

触って遊ぶ前提では、塗膜の耐久とクリアランスの確保が重要です。ここでは擦れの起点を見つける方法、低摩擦の工夫、軸の渋さを和らげる方法を整理します。核心は当たりの可視化低摩擦化です。

当たりの可視化で原因を特定

仮組みで大きく動かし、当たる箇所に鉛筆やチョークでマーキングすると接触点が見えます。見えない裏面の角を軽く面取りし、見える面は極力触らない方針にすると見映えを損ねにくいです。

低摩擦の工夫と薄膜化

摺動面は無塗装か、薄いメタリック+半艶で止め、粉体の潤滑を薄くまぶすと動きが滑らかです。厚いクリアは避け、色で見せたい面だけに艶を集中させると安心です。

軸の渋さと緩みへの対応

渋い軸は受け側の内角を軽くさらうと改善します。逆に緩い場合は薄いテープやコート剤で調整できますが、可動の範囲と負荷を考えた上で、外れる方向へ無理がかからないように組みます。

  • 当たりは鉛筆で見える化する
  • 摺動面は無塗装か極薄で運用
  • 潤滑は粉体を薄く、液体は最小限
  • 内角の面取りで干渉を避ける
  • クリアは厚みを作らない
  • 軸は受け側の微修正で整える
  • 負荷の逃げ道を意識する
注意:粉体潤滑は過剰で白化が目立つことがあります。指で軽く馴染ませる程度が目安です。

  1. 仮組みで可動全域を往復させる
  2. 接触点へマーキングして検証
  3. 見えない裏の角を微小面取り
  4. 摺動面は薄膜と半艶で統一
  5. 潤滑とクリアの量を最小限に保つ

仕上げ後の組み上げ・撮影・保管:長期維持の工夫

完成後の扱いで寿命が変わります。組み上げ時の持ち方、撮影の光と背景、保管中の圧や湿気の管理を意識すると、塗膜と可動を長く保てます。最後は手順を短く書き出し、迷いを減らすのが近道です。視点は負荷分散環境安定です。

組み上げ時の持ち方と順序

広い外装ではなく、芯のあるフレーム側を持って組むと圧が分散します。硬い箇所に当たったら無理をせず、一段戻して角度を変えると傷を避けやすいです。布手袋は繊維の引っかかりが少ないものが扱いやすいです。

撮影で質感を活かす

半艶主体なら柔らかい光が合います。背景は薄いグレーで白飛びを抑えると、金属のニュアンスが素直に出ます。リムライトを細く足すと輪郭が立ち、内部の密度が写真でも伝わりやすいです。

保管とメンテのポイント

可動部に荷重がかかる姿勢で長期放置すると、擦れや癖の原因になります。支え棒やクッションで負荷を逃がし、直射日光と高湿を避けると安定します。埃は柔らかいブラシで落とし、拭きは最小限に留めると安全です。

比較

明るい背景

  • 清潔感で外装が映える。
  • 白飛びに注意が必要。
  • 内部の陰影は弱く出る。
薄いグレー背景

  • 金属の階調が出やすい。
  • 露出の追い込みが楽。
  • 埃はやや目立ちやすい。
ミニFAQ

Q. 指紋が付く? A. 半艶は目立ちにくいですが、撮影前に軽くブロワーで。

Q. 長期で渋くなる? A. 潤滑の粉をほんの少量、動かす前に馴染ませると緩和します。

Q. 色がくすむ? A. 直射やタバコの煙は避け、密閉よりも通気を確保すると安定します。

まとめ

内部フレームの塗装は、薄膜と密着を前提に、可動のクリアランスを確保しながら質感を積み上げる作業です。黒/グレーの下地で土台を決め、金属色を薄く重ね、艶の配分で面の情報を整えると、写真でも手でも満足度が上がります。
マスキングは順序と識別で歩留まりを上げ、干渉は当たりを可視化して裏側で解決すると安全です。完成後は持ち方・光・保管の三点で塗膜を守り、長く動かせる状態を保ちましょう。今日の一歩は、塗る面と塗らない面を紙に描き出し、仮組みの検査点を決めるところからが目安です!