ガンプラのサーフェイサー入門|色と番手の基準と下地作りを身につける

塗装の発色や食いつきがいまひとつ安定しないとき、下地がふらついていることが少なくありません。サーフェイサーは微細なキズを埋め、色のノリを整える頼れる下地材です。とはいえ色や番手が多く、缶とエアブラシの使い分けも悩みどころです。まずは「目的から逆算して選ぶ」と決め、作例に合う色と粒度を選び、安定した希釈と圧で薄膜を重ねることから始めましょう。
この記事では、役割の整理→選び方→手順→失敗の回復→下地設計→安全と応用の順でまとめます。読み終えたとき、明日の作業で迷いが一つ減っているはずです。

  • 色(グレー/ブラック/ホワイト)の使い分けが発色を左右
  • 番手は傷隠しと塗装のキレの折り合いで決める
  • 薄膜を重ねるリズムが仕上がりを安定させる
  • 失敗は症状別に切り分けると道筋が見える

ガンプラのサーフェイサー入門|運用の勘所

サーフェイサーとは、塗装前に薄く塗って表面を均し、上塗りの発色と密着を助ける下地用塗料のことです。かんたんに言うと「微細な段差をならし、色の土台を整える層」です。ガンプラでは、合わせ目処理や段差消しのあとに塗り、色の乗りを全体で均一にします。最初に決めるのは番手(粒度)、そして運用(缶/エアブラシ)の三点です。

色の使い分けを目的で決める

グレーは万能で色の偏りを防ぎます。ブラックは金属色や濃色の深みを出したい時に有効で、ホワイトはイエローやレッドなど透けやすい色の下で発色を助けます。迷ったらグレーを基準に、ポイントで黒白を使い分けます。

番手(粒度)とキズ隠しの折り合い

#1000〜#1200はキズ隠しと上塗りのノリの両立がしやすい定番。#1500〜#1800はキズ隠し力は弱まる代わりに滑らかで、上塗りのキレが向上します。ヤスリ番手との繋ぎを意識し、最後に一段細かい番手で均すと境目が消えやすいです。

ラッカー・水性・UVの違い

ラッカーは乾燥と強度のバランスが良く広く使われます。水性は臭いが穏やかで室内向き、乾燥にやや時間が必要です。UV硬化は特殊用途で段差埋めに便利ですが、厚塗りと収縮に注意します。

缶スプレーとエアブラシの適性

缶は手早く均一に塗れますが、塗料の出が一定で細部の制御が苦手です。エアブラシは希釈や圧を調整でき、薄膜で重ねやすいのが強みです。面積と時間に合わせて使い分けます。

素材相性の確認

ABSや軟質パーツは溶剤で割れやすいことがあります。強い溶剤に不安がある場合は水性や、希釈を弱めた薄膜重ねを選ぶと安心です。端材で試してから本番に進めましょう。

メリット/デメリットの比較

グレー 万能で色ブレを抑える 白や蛍光色の発色はやや弱め
ブラック 金属と濃色が深く見える 明色は乗せ回数が増える
ホワイト 黄赤の発色を底上げ 傷や透けが目立ちやすい

ミニ用語集

  • 番手:塗膜の粒度イメージ。数が大きいほどきめ細かい。
  • 食いつき:上塗りが下地に密着する度合い。
  • カブリ:白っぽい曇り。湿度や過乾燥で起きやすい。

ベンチマーク早見

  • 万能狙い:グレー#1200
  • 明色の底上げ:ホワイト#1500
  • 金属・濃色:ブラック#1000〜#1200
  • 仕上げ重視:#1500以上を薄く重ねる
  • 広面時短:缶→仕上げはエアで整える

ガンプラ サーフェイサーの基本手順と吹き方

安定の近道は「薄膜を時間差で重ねる」ことです。面を濡らしすぎない距離と圧、そして乾燥待ちのリズムが肝心です。エアブラシなら希釈を一定に保ち、砂吹きから本吹きへ段階を踏むと、ムラやたれを避けながら均一な下地に近づきます。ここでは失敗しにくい手順を段階化します。

希釈・圧・距離の起点

希釈は1:1前後から、圧は0.05〜0.08MPa、距離は15〜20cmを起点に調整します。霧が面でほどける様子をテストピースで確認し、にじみや粉っぽさが消えるポイントを探します。

砂吹き→本吹き→確認の流れ

一度目は砂吹きで面を起こし、2〜3分置いてから本吹きで薄く均します。反射でムラを確認し、必要ならごく薄く一往復を追加します。焦らず合間に送風乾燥を挟むと安定します。

パーツ保持と順序

持ち手は影になりにくい位置に刺し、複雑形状は角から軽く当ててから面へ移ります。内側→外側、奥→手前の順に進むと塗り残しが減ります。

手順ステップ

  1. テストピースで希釈と圧・距離を確認する
  2. 砂吹きで面を起こし乾燥を待つ
  3. 本吹きで均一に一往復だけ乗せる
  4. 反射を確認し必要なら極薄で追う
  5. 一晩安静にして上塗り前に見直す

チェックリスト

  • 希釈と圧の記録を残したか
  • 湿度と室温を確認したか
  • 砂吹きの乾燥を待ったか
  • 角→面の順で当てたか
  • 最終膜は薄く一往復に収めたか

注意:厚塗りは段差の縁で割れやすく、上塗り色のキレも鈍ります。
濡らさず、薄く、時間を置く。この三つを優先しましょう。

色の発色と下地設計をつなぐ考え方

上塗り色のゴールを先に決めると、下地設計が自然と決まります。白や黄色など透けやすい色はホワイト下地で段数を減らし、赤はウォームグレー〜ピンク寄りの下地で乗せやすくなります。金属色はブラックで締め、パールは粒子が映えるフラットな面を作ると見栄えが伸びます。

色別の相性と段数の目安

白:ホワイト#1500で2回、黄:ホワイト#1500で1〜2回、赤:グレー#1200→赤、青:グレー#1200で整えます。金属:ブラック#1000〜#1200。段数は塗料の隠ぺい力で調整し、常に薄膜で重ねる意識を保ちます。

サフの色でコントラストを演出

同色系の外装でも、黒下地で深み、白下地で軽さを演出できます。各ユニットで下地色を変えると、塗り分けなしでも面の抑揚が生まれます。

メタリックとパールの下地

メタル粒子を整えるには滑らかな面が必須です。#1500以上の薄膜重ねでフラットにし、ブラックやダークグレー下地で粒子の立ち上がりを助けます。パールは白系で明るさを保ち、粒子のムラを避けます。

色×下地の相性表

上塗り色 推奨下地 番手の起点 備考
白・黄 ホワイト #1500 段数を抑えて透け対策
グレー〜ピンク系 #1200 落ち着いた発色へ
青・緑 グレー #1200 色ブレを抑える
金属色 ブラック #1000〜#1200 深みと粒子の立ち
  • 白と黄は下地で段数を節約
  • 赤はグレーで落ち着きを出す
  • 金属は黒で深さを作る
  • 同形状でも下地で抑揚を演出
  • 常に薄膜で重ねる前提で組む

ミニ統計

  • 白/黄の透け対策はホワイト下地で段数が体感減少
  • 黒下地の金属は粒子の立ち上がりがわかりやすい
  • #1500仕上げの上塗りは光の映りが滑らかに見える

失敗を切り分けて回復する手順

トラブルは原因を一つずつ外していくと、必ず出口があります。ザラつきは希釈や距離、カブリは湿度や過乾燥、たれは濃度と近距離、本体割れは溶剤強度と厚塗りが疑わしいところです。焦らず、観察→第一手→次の手の順で対処します。

症状別の第一手

ザラつき:粘度を少し上げて距離を詰める。カブリ:湿度を下げ、薄く追い吹きで溶かす。たれ:乾燥を待ってから研磨→薄膜で繋ぐ。割れ:薄塗り運用に切り替え、素材に穏やかな系統へ。

回復の段階フロー

軽症は上塗りで隠せる場合も、迷ったら#1000〜#1500で均し直し、極薄でサフを敷き直します。段差が大きいときは充填系で補修してから、#800→#1000→#1500で再構築します。

再発防止の見直し点

希釈と圧の記録、湿度管理、距離の固定、乾燥時間の見直しの四点をメモで可視化します。毎回の見直しが次の安定につながります。

よくある失敗と回避策

  • 近距離で厚塗り→距離固定と砂吹き起点で改善
  • 湿度管理なし→作業前に必ず湿度を確認
  • 希釈ぶれ→計量を固定してテストを徹底
ミニFAQ

  • Q: カブった時の最短回復は? A: 送風後に極薄で一往復、溶かし合わせます。
  • Q: ザラつきは隠せる? A: 上塗りで隠れにくいので研磨→極薄で整えます。
  • Q: 割れが怖い。 A: 水性や弱溶剤運用へ切り替え、薄塗り重ねを徹底します。
見直し手順(7〜9項目)

  1. 希釈と圧・距離の記録を確認する
  2. 湿度と室温を測る
  3. テストピースで霧質を見る
  4. 砂吹き→本吹きの順を守る
  5. 乾燥を挟んでから次工程へ進む
  6. 必要なら研磨→極薄で再構築する
  7. 再発防止のメモを残す

作業環境と安全で仕上がりを支える

下地は環境に強く影響されます。風路と静音、湿度と温度、そして換気と保護具。これらが整うと、同じ手つきでも仕上がりが安定します。ブースは吸引を優先し、ダクトは太く短く、窓のすき間を塞ぎます。乾燥は送風主体で、加熱は控えめに扱うと安心です。

湿度と温度の管理

湿度60%超はカブリの警戒域、50%前後が快適の目安です。温度は20〜25℃で安定しやすく、寒暖差が大きい日は室温を整えてから作業します。

換気と静音の両立

静音を狙うほど吸引が落ちやすいので、配管を最適化して低速でもミストを逃がします。家族や近隣への配慮は時間帯と短時間集中で折り合いが取りやすくなります。

保護具と後片付け

マスクは密着感を優先し、手袋は繊維残りの少ないタイプを選びます。作業後はブース周りの粉塵を拭き取り、フィルターの汚れを見ておきます。

注意:加熱乾燥はプラの歪みとクラックを誘発します。
送風と時間で乾かし、必要なら翌日に回す判断が安心です。

環境要素の目安表

湿度 50%前後を狙う 60%超は回避 除湿や送風を併用
温度 20〜25℃ 低温は霧が荒れる 室温の安定が有効
配管 太く短く 曲げ少なく 漏れ音と抵抗を抑制
片付け前のチェック

  • フィルターの目詰まりを確認
  • 窓のすき間テープの密着を確認
  • 粉塵を拭いて静電を逃がす

応用テクニックとサフレスの考え方

作例によっては、段落ちモールドの再生やキズ埋め、クリアパーツの取り扱いなど、下地の工夫が仕上がりを左右します。必要な場所だけに濃度を変えて当てる、研磨と併用して最小限の膜厚で目的を果たす、といった使い分けが効いてきます。透明部やメッキ部は基本サフレスで、マスクや接着順序で保護します。

部分的な埋めと段差の処理

小キズや段差は充填系で埋め、#800→#1000→#1500で面を作り直します。どうしても残るピンホールは、希釈をやや濃いめにして点で当て、乾燥後に均します。

サフレス運用の判断

クリアパーツやメッキパーツはサフレスが基本。裏からの色差しや、別パーツの下地でコントラストを演出し、透明感や金属感を守ります。必要があれば保護クリアで面を整えます。

記録と再現性

希釈・圧・距離・湿度・乾燥時間・番手を記録し、作例ごとの「配合カード」を作ると再現が速くなります。次の作例で迷いが減り、到達点へ短く辿り着けます。

「濡らさず薄く、時間で育てる。」
この一行を作業台に貼っておくと、焦りそうな場面で思い出せます。
ベンチマーク早見

  • 段差消し:充填→#1000→#1500→極薄で整える
  • ピンホール:点打ち→乾燥→均し→極薄
  • 透明部:サフレス+保護クリアを検討
  • メッキ:下地は触らずマスクで守る
  • 再現性:配合カードで記録を残す
応用の小技

  • パーツ裏で色の透けを試し段数を決める
  • 面の向きごとに光の当て方を変える
  • 乾燥は送風主体で形状の歪みを避ける

まとめ

サーフェイサーは「色を乗せやすく、面を整える」ための最初の一歩です。目的から色と番手を決め、希釈と圧・距離を記録しながら薄膜で重ねると、同じ手つきでも見違えるように安定します。白や黄色はホワイトで、金属はブラックで、万能はグレーで土台を作り、仕上げたい表情に合わせて段数を調整しましょう。
トラブルが出ても原因を一つずつ外していけば、必ず再現性が上がります。環境を整え、焦らず時間を味方に付けていけば、上塗りの自由度は大きく広がります。今日の作業に、薄く一回の勇気を足してみてください。