発光する刃をどう見せるかは、色の選択だけでは決まりません。下地や濃度、光の方向、そして写真でどう映るかまでつながったとき、ビームサーベルの存在感は一段と増します。とはいえ一気に正解へたどり着く必要はありません。まずは小さな基準を置き、薄い層を重ね、翌日に光の下で見直すだけで仕上がりは落ち着きます。この記事では発光の設計から下地と塗料の組み合わせ、塗り方と仕上げまでを一本の流れにまとめ、数値の目安で再現性を上げます。
- 中心を明るく縁を締める設計で光を感じさせます
- エアブラシと筆の希釈と距離を固定してムラを減らします
- 透明パーツの曇りは溶剤と湿度の制御で予防します
- 仕上げの艶と撮影の露出で見え方を整えます
ガンプラのビームサーベルを塗装して光を操る|背景と文脈
最初に決めるのは「どこが一番明るいか」という設計です。実機の光源を想像して、中心線を最明部、外周に向けて徐々に濃く、根元側をわずかに強調という三点を起点にします。これだけで方向性が整い、色選びや手順が揺れにくくなります。刃の透明感を失わないため、濃度ではなく層の数で深さを出す考え方に切り替えるのが近道です。
光の設計をシンプルに固定する
中心線を細く明るく、外周を薄く締める設計にすると、見る人は自然に「内側が光っている」と感じます。根元の発光源を意識して少しだけ明部を広げ、先端に向けてなだらかに細くしていきます。迷ったら左右対称を優先し、片側が濃いときは反対側を足すのではなく、薄い側の幅を調整して均します。
色選びの基本と温度感の使い分け
赤は重量感と攻撃性、ピンクは軽さ、青は冷たさ、緑は清潔感を伴います。ベースのクリア色にほんの少し白を混ぜると乳白の軸が生まれ、写真で芯が拾いやすくなります。寒色は中心の白成分を少し強め、暖色は外周のスモークを控えめにすると、刃の輪郭が柔らかくなります。
下地を活かすか透明感を残すかの判断
銀下地はキャンディの深みが出ますが、透明成形の刃では内部のダボや気泡が強調されることがあります。成形色を活かすなら下地なしで、表面だけを整えてから薄い層で積み上げます。どちらにするかは刃を逆光で観察し、内部構造が目立つなら透明感優先に切り替えるのが安全です。
溶剤強度と湿度の影響を知る
クリア成形は強溶剤で白化しやすく、湿度が高いとカブりが出ます。塗装は室温20〜25度、湿度50%前後を目安に、希釈を高めて遠めの砂吹きから始めます。焦って距離を詰めると一気に曇るので、半乾燥を挟んでから様子を見ます。
練習用プラ板で往復数を見える化
本番前に透明板で試し、何往復で芯が立ち上がるかを記録します。重なり幅は三割で統一し、中心の明部は最後に残します。練習カードを保管しておくと、色替えのたびに迷いが減ります。
- 洗浄と微細研磨で面を整え、足付けを薄く残す
- 中心線の最明部を残す設計を下描きで確認する
- 砂吹き→半乾燥→薄く流し、二往復で様子を見る
- 外周を0.5往復だけ締め、芯は最後に触れる
- 翌日に自然光で見直し、足し引きの最終調整
- 最明部
- 一番明るい帯。中心線や根元に置くと発光感が出る。
- 砂吹き
- 遠距離で粒を乗せる下地づくり。密着と曇り防止に効く。
- カブり
- 白化現象。湿度の高さや強溶剤の急冷で起こりやすい。
- キャンディ
- 金属下地+透明色で得られる深い発色の総称。
- スモーク
- 透明黒系。外周を締め輪郭を強調するのに向く。
基礎の軸が定まると、色や塗料の選び方がぐっと楽になります。次は素材と塗料の相性を整理し、事故を避けながら狙いの発色へ進めます。
素材と塗料の相性を理解して下地を決める
ビームサーベルは透明成形が多く、素材の癖が仕上がりに直結します。ここではPS透明の扱い方、ラッカー/アクリル/エナメルの使い分け、蛍光顔料と偏光下地の活かし方を整理します。相性を知っておくと、発色と透明感のバランスが安定します。
PS透明と塗料系統の基本相性
PS透明はラッカーの強溶剤で白化やクラックが出やすい反面、薄膜での密着は良好です。アクリルは穏やかで扱いやすく、エナメルはスミ入れ向きですが裏面からの浸透に注意します。塗り重ねは薄く、乾燥を挟むほど安全域が広がります。
蛍光カラーと光の拾い方
蛍光色は光を受けると強く跳ね、写真でも鮮やかに写ります。中心の最明部は蛍光+白寄り、外周は同系統の通常クリアで締めると階調が作りやすいです。過度な蛍光は色飽和を起こすので、周辺パーツの彩度と相談しながら薄く調整します。
偏光/メタ下地の活かし方
偏光や極細メタ下地にクリアを重ねると、角度で色が軽く転びます。刃全体では強すぎることがあるため、根元のハブやエミッター付近のリングだけに使うと、密度感が上がりつつ主張が過剰になりません。
- ラッカー:薄膜で発色が早い/強溶剤で白化に注意
- アクリル:穏やかで扱いやすい/乾燥に時間が要る
- エナメル:スミ入れや表情付けに良い/割れリスク
- 蛍光:光をよく拾う/飽和で階調が浅くなる
- 偏光:角度表現に強い/全面はトゥーマッチ
- 透明感重視:アクリル+低圧+薄膜で段階重ね
- 深み重視:銀下地+ラッカー薄層でキャンディ
- 写真映え:中心蛍光+外周クリアで階調づけ
- 派手過ぎ防止:偏光は根元やアクセントに限定
- 安全域拡大:乾燥は最低一晩を基本に据える
相性と目安が見えたところで、次は具体的なグラデーション作りです。エアブラシの距離と速度、希釈と圧を固定し、中心線の芯を最後に残す手順へ落とし込みます。
エアブラシで作る中心発光グラデーションの実践
透明色は厚みがそのまま濃さになります。ムラを避ける近道は、距離10〜12cm、圧0.05〜0.08MPa、重なり幅三割を固定し、半乾燥を挟んで層で深さを出すことです。止め際の霧だまりは最初に潰し、芯は最後に触れる前提で進めます。
中心を残しながら外周を締める
最初の二往復は外周を意識し、中心5〜7mmは触れません。三往復目から中心へ寄せ、先端と根元のバランスを確認します。根元は気持ち強く、先端は細く軽くが基本です。芯の白は最後に薄く置き、にじませず止めます。
希釈と圧の相関を体感で覚える
希釈が高いほど粒は寝てムラが減りますが、発色は遅くなります。圧が高いと粒が立ち、低いと乗りは遅いが滑らかです。常に試し吹きカードでザラつきと艶を確認しながら、希釈と圧を少しずつ振って最短の組み合わせを見つけます。
止め際と先端の処理
トリガーを戻してから手を離し、止め際のミストを残さないようにします。先端に塗料が溜まると一気に暗くなるので、速度を一定に保ち、先端の外側でトリガーを戻します。最明部を踏み潰したら焦らず翌日薄く戻します。
| 項目 | 起点値 | 調整の方向 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 距離 | 10〜12cm | ザラつき→近づける | 反射で粒の寝方を見る |
| 圧 | 0.06MPa | 粒が立つ→下げる | エッジの荒れ具合 |
| 希釈比 | 1:1 | ムラ→希釈↑ | 二往復で艶が均一か |
| 速度 | 30〜40cm/秒 | 溜まる→速度↑ | 端の濃度の帯 |
| 重なり | 三割 | 段差→幅を固定 | 境界の帯が消えるか |
- 試し吹きで距離・圧・希釈の初期値を決める
- 外周を二往復で締め、中心は残す
- 半乾燥で艶が落ちたら0.5往復を積む
- 根元を気持ち強め、先端は細く軽く整える
- 翌日に芯の白と微調整を足して完成へ
よくある失敗と回避策
粉っぽい:距離が遠いか圧が高い。距離を詰め圧を下げる。
暗く沈む:層の入れ過ぎ。0.5往復に抑え翌日に再確認。
筋ムラ:重なり幅がぶれている。三割を声に出して確認。
エアの基準が固まれば、筆でも同じ設計をなぞれます。次は筆塗りで芯を残しやすくする工夫と、ドライブラシで縁を光らせる小技をまとめます。
筆塗りとドライブラシで芯と縁を際立たせる
筆塗りは道具が少なく静かに進められる強みがあります。希釈を高め、筆圧を最小に、往復は短く、三層で完成を前提にすると筋が出にくくなります。最後に縁へごく薄いドライブラシを当てると、光が回ったように見えます。
筆の運びと層の分け方
一層目は面を濡らすだけ、二層目で色の方向を作り、三層目で中心を残します。毛先は常に刃の長手方向へ動かし、止め際は刃の外で筆を離します。塗り直したくなったら乾燥を待ち、薄い層でやり直すと跡が残りません。
ドライブラシで縁に光を回す
明度の高い白寄りの色をほぼ乾いた平筆に取り、縁の峰だけを軽く撫でます。やり過ぎると粉っぽくなるため、一度で決めず二回に分けます。写真で縁の帯が拾われ、発光の厚みが出ます。
筆の種類とメンテナンス
面はセーブルや合成毛の中硬度、縁は腰のある平筆が扱いやすいです。洗浄は穏やかな溶剤を使い、拭き取りは根本へ力をかけずに行います。毛先を守るだけで仕上がりが安定します。
- 一層目:希釈高めで全面を軽く湿らせる
- 二層目:外周から中心へ寄せて方向を作る
- 三層目:中心5mmを残して白寄りを軽く置く
- 仕上げ:縁へ極薄ドライで光の帯を作る
- 翌日:必要なら0.5層だけ足して整える
- 希釈を高めに設定して筋を出さない
- 筆圧は自重+αを超えない
- 止め際は刃の外で筆を離す
- 縁のドライは極薄を二回に分ける
- 翌日に自然光で発色を見直す
筆でも芯と縁が整えば、次にぶつかる壁は養生と組み立て時の白化です。透明パーツのマスキングと接着を工程で安全に通過させ、仕上げの透明感を守ります。
透明パーツのマスキングと接着を安全に通す
美しい塗装ほど傷や曇りが目立ちます。そこで粘着と圧着の管理、剥がす角度とタイミング、接着剤の選択と換気を工程で固定します。小さな気遣いの積み重ねが完成時の透明感を守ります。
テープ選びと境界の処理
新しいテープは強いことがあります。手の甲で一度粘着を落としてから使用し、境界は綿棒の先で軽く撫でて圧着します。吹き付けは外から内へ流し、染み込みを抑えます。剥がしは完全乾燥後に浅い角度で行います。
曲面と細線の養生を安定させる
細切りテープで輪郭を作り、内側を広幅で埋めます。複合曲面は切れ込みを入れてシワに逃げ道を作ると浮きが減ります。境界を強く押し込みすぎると剥がすときに塗膜が割れるので、指の腹で均す程度に留めます。
白化を避ける接着の順序
溶着系はガスで白化しやすいので、クリア近くでの使用は最小限にします。根元の固定は物理的な勘合を優先し、どうしても接着が要る場合は換気と硬化後の休ませ時間を確保します。瞬着は別日の硬化が安心です。
- 圧着は境界だけを綿棒で軽く撫でる
- 剥がし角度は15〜30度でゆっくり
- 接着は換気+最少量+別日硬化が基本
- 展示前は24時間以上の乾燥を確保
- 養生前に静電気を落として埃を防ぐ
Q:漏れた境界はどう直す?
A:完全乾燥後に極細研磨でならし、薄い層で追うと跡が残りにくいです。
Q:白化が出たら?
A:磨き直しで戻せる場合があります。無理に擦らず翌日判断します。
Q:接着前にできることは?
A:マスキング跡と油分を拭き、仮組みで勘合を確認してから少量で固定します。
工程が安全に通せると、仕上げと写真で魅力が素直に伝わります。最後は艶と撮影の整え方、メンテと保管で長く楽しむための工夫をまとめます。
仕上げと撮影で発光を際立て長く楽しむ
完成の印象は艶と光の当て方で大きく変わります。ここではトップコートの選び分け、露出と背景の整え方、メンテと保管を実用目線で整理します。少しの手数で作品が呼吸するように見えます。
艶別の選択と塗り重ね
光沢は透明度と深みが増し、半光沢は情報量が整い万能、つや消しは落ち着くがガラス感は弱くなります。刃は光沢寄り、グリップは半光沢、外装の内側は消しが目安です。いずれも極薄で回数を分け、半乾燥を挟みます。
写真で芯を見せる露出と背景
白い背景は蛍光が飛びやすく、黒い背景は外周が締まって芯が見えます。露出はややアンダーで、ライトは斜め上から柔らかく一灯。反射で芯が拾えたら、レフで全体を軽く起こします。過度なコントラストは情報を潰すので避けます。
メンテと保管で黄変と傷を防ぐ
直射と高温多湿を避け、ケースで防塵します。触れる際は手袋を使い、柔らかい布で軽く拭きます。小傷は薄い追いクリアで目立たなくできる場合があります。無理に直さず、次作で活かす記録を残すのも一つの楽しみ方です。
- 光沢:透明感と深みが最大/埃が目立つ
- 半光沢:万能で清潔感/やや艶が落ち着く
- つや消し:情報が整理/ガラス感が弱まる
- 背景は黒寄りで芯を拾う
- 露出は気持ちアンダーで階調を残す
- 光は一灯+レフで整える
- 展示は直射と湿度を避ける
- 手袋とケースで清潔感を守る
仕上げと撮影の基準ができれば、作品は安定して光ってくれます。道具と手順を小さく固定し、翌日に見直す癖だけで仕上がりは静かに整います。
まとめ
ガンプラのビームサーベル塗装は、中心の最明部を残しつつ外周で締める設計が軸になります。素材と塗料の相性を踏まえ、距離・圧・希釈を固定して層で深さを作れば、透明感と発色は両立します。透明パーツは養生と接着の順序を整え、仕上げの艶と撮影の露出で魅力を引き出します。
今日から「重なり三割」「二往復で様子見」「半乾燥を挟む」を合言葉に、薄く丁寧に積み上げてみてください。判断が軽くなり、刃が自然に光って見えるはずです。

