ガンプラの関節を塗装で仕上げる基礎と実践の流れを見てみよう!擦れに強く動かして映える

ポーズを付けて遊びたいのに、塗膜が関節で擦れて白化したり、動きが渋くなって割れた経験は珍しくありません。関節は動かす前提の部位なので、素材の相性と接触面の設計が仕上がりを大きく左右します。本稿では、実体験に沿って段階を細かく分け、塗りやすさと耐久の釣り合いを取りながら進めます。読み終えるころには、使う塗料やプライマーを迷わず選び、擦れや可動のトラブルを早い段階で予防できるようになります。動かして楽しい仕上がりをいっしょに目指しましょう。

  • 最初に素材を見極め、相性の悪い塗装を避ける
  • 摩耗面は塗らずに色で見せ、擦れを減らす
  • 乾燥とテストを挟み、無理をせず戻せる工程に
  • トップコートと潤滑で可動の寿命を伸ばす

ガンプラの関節を塗装で仕上げる基礎と実践の流れを見てみよう|安全に進める

塗り方の前に、関節の材料を把握するのが近道です。ガンプラの関節は主にKPS・ABS・POM・ポリキャップの組み合わせで構成され、素材ごとに塗料の乗り方が異なります。ここを外すと、乾いても爪で削れる、可動で割れる、白化やベタつきが残るなどの悩みが連鎖しやすくなります。まずは観察と簡単なテストで素材の候補を絞り、塗る場所と塗らない場所を決めるところから始めます。

素材別の見分けポイントと相性

KPSは適度にコシがあり、ランナー表記や質感で判別しやすい樹脂です。水性やラッカーの密着が良好で、通常のプラ用プライマーで十分に食い付きます。ABSは硬く、成形色がやや濃くツヤが出やすい傾向があります。溶剤に敏感なので、濃いラッカーを直で厚吹きするとクラックのリスクが上がります。POMは摺動に強い代わりに塗装は基本不向きで、プライマーを工夫しても耐久は限定的です。ポリキャップはエラストマー系で、塗るとベタつきや剥離が起きやすいため原則無塗装を選びます。

どこを塗り、どこを塗らないかの設計

関節は“見える筒”と“擦れる芯”に分けて考えます。見える外筒や装甲連動のパーツは色で説得力を出し、芯棒やポリキャップと密着する凹部は無塗装、または下地のみで済ませるとトラブルが減ります。可動範囲の端では塗膜が曲面で引き伸ばされるので、曲率が強いエッジは極薄で色を載せる、もしくは先に微妙に面落としをして塗膜の“逃げ”を用意しておくのが有効です。

観察とスケッチで可動干渉を予測する

塗る前に素組み状態でフル可動させ、干渉する箇所を鉛筆で軽くマーキングします。ヒンジなら回転軸の内側、ボールならカップの縁が当たりやすいので、そこに“塗らない帯”を設ける想定スケッチを作ります。塗らない帯が見えない構図に収まるかを確認し、見えてしまう場合は別パーツで色を拾う、メタリックで視線をずらすなどの視覚設計で解決します。

プライマー選択の原則

KPSやPSには通常のプラ用プライマーで十分ですが、ABSは薄く、乾燥を長めに取るのが安心です。POMは密着促進剤が効く場面もありますが、摺動で剥離しやすく、可動部ではおおむね無塗装が現実的です。水性アクリルは膜が柔らかく擦りに強い反面、密着が弱い環境では爪で削れます。ラッカーは密着は良いが硬さが出やすく、薄膜管理が鍵です。素材×塗料×厚みの三点で最終の耐久が決まります。

安全と匂い・粉対策

関節の下処理では粉が出やすいので、作業トレー内で削り、ブラシを使う場合は弱い吸引を併用します。溶剤臭は水性中心へ寄せる、もしくは低臭ラッカーと乾燥ブースで軽減できます。パーツが小さいのでピンセットの可動で飛びやすく、作業中は浅い箱を“落下防止ネット”として手前に置くと紛失が減ります。

手順ステップ

  1. 素組みで可動を全開にし、干渉位置を鉛筆で記録する
  2. ランナー表記と質感で素材を推定し、相性の悪い塗装を除外する
  3. 塗る面と塗らない帯をスケッチで決める
  4. 試験片でプライマーと塗料の組み合わせを確認する
  5. 乾燥時間の基準を決め、工程表に落とし込む

注意

ポリキャップとPOMは原則無塗装。塗ると可動が渋くなり、剥離した塗片が可動部に噛み込みます。色は外装側で拾う設計に切り替えましょう。

ミニ用語集

  • KPS:衝撃に強いPS。塗装との相性が良い。
  • ABS:硬くて丈夫。厚塗りや強溶剤に注意。
  • POM:摺動向け。基本的に塗装不向き。
  • 塗らない帯:干渉面に設ける無塗装ゾーン。
  • 逃げ:塗膜が割れにくくなる微小な面落とし。

分解と下処理で塗膜の土台を整える

うまく塗れない原因の多くは、塗る前の準備で決まっています。ここでは、分解→ゲート処理→脱脂→面出し→プライマーの順に、関節ならではの注意点をまとめます。可動パーツはつまむ面積が小さく、力が一点に集まりやすいため、工具の当て方をやさしく変えていくのがコツです。

分解のコツと破損防止

スナップフィットは“せん断”より“こじり”が効きます。外装を温めて樹脂の粘りを少しだけ上げてから、薄いヘラを差し込んで段階的に開きます。ピンの方向を見誤ると白化しやすいので、同キットの反対側を観察して構造を把握しておくと安全です。金属工具は直接見える面に触れないよう、コピー用紙を挟むと傷が残りません。

ゲート・パーティングラインの整え方

関節は光が回りにくい位置にあるため、ゲート跡やパーティングラインの荒れが影で強調されます。#600→#800→#1000の順で当て、最後に柔らかいスポンジやすりで面をつなぎます。角は立てず、触れて丸みを感じない程度の“鈍角”にすると、塗膜が乗っても割れにくくなります。ディテールを潰さないよう、筋彫りはガイドテープで浅く引き直しておくと締まります。

脱脂と指紋対策

中性洗剤での洗浄後、アルコールで軽く拭き、素手で触る時間を最小限にします。クリップ持ち手を増やして“触らない工程”を作ると、塗膜の魚眼や弾きが減ります。ABSは溶剤で応力割れの可能性があるため、強いシンナー拭きは避け、水性系のクリーナーを使うのが無難です。

ミニチェックリスト

  • 分解は温めてから薄いヘラで段階的に
  • ゲートは#600から始めて鈍角仕上げ
  • 筋は浅く引き直し、エッジを立て過ぎない
  • 脱脂は水洗い+アルコールで素手時間を短く
  • ABSへ強溶剤拭きは避ける

よくある失敗と回避策

ピン折れ:力の方向が逆。反対側を観察してから“こじり”で外す。
白化:乾燥不足や応力過多。温めてから作業し、無理を感じたら戻って休ませる。
魚眼:脱脂不足。洗浄後は素手で触らず、持ち手運用に切り替える。

ミニ統計:下処理時間の目安

  • HG関節一式の分解・洗浄:40〜60分
  • ゲート・ライン処理:60〜90分
  • 脱脂〜乾燥:20〜30分
  • プライマー薄吹き→乾燥:15分→1〜2時間

ガンプラの関節塗装レシピと色の段階設計

色づくりは“薄い層で積む”ことと、“見せ場だけ濃くする”ことが中心です。金属色やグレーのニュアンスは写真で差が出やすく、暗い下地→中庸色→ハイライトの三段を基準にすると迷いが減ります。ここでは工程を順に並べ、失敗しやすい箇所を前倒しでケアします。

基本の工程順

  1. プライマーを極薄で二層。1層目は霧で、2層目は面を繋ぐ
  2. 下地のダークグレーを薄く。谷や奥はやや冷色寄り
  3. 関節色(中庸グレーやメタリック)を面の向きで塗り分け
  4. エッジに明るい中間色で点のハイライトを置く
  5. ピンやシリンダーにメタル色を挿し、視線をまとめる
  6. 乾燥後に艶で調整。半艶を基調に局所で艶変化
  7. 可動テスト→必要なら“塗らない帯”を広げて再塗装

筆とエアの使い分け

細い筒や奥まった面は筆の方が塗り残しが少なく、塗膜も薄く制御できます。平らなシリンダーや外装に露出する関節フレームはエアで均一感を出すと気持ちよく仕上がります。筆ムラは希釈と乾燥の見極めで大きく減り、“広げる→触らない”を徹底すると膜が乱れません。メタリックは粒子が動くため、エア中心で、最後だけ筆でチッピングを添えると密度が上がります。

色の温度と写真写り

画面で見ると、関節グレーは背景や外装色の影響を強く受けます。外装が寒色なら関節はわずかに暖色へ、外装が暖色なら関節はわずかに冷色へ寄せると、輪郭が浮きすぎず沈みすぎない“ちょうどよさ”が得られます。金属色は粗い粒子を避け、スーパーファイン系を低圧で薄く掛けると上品にまとまります。

ミニFAQ

Q. エナメルでスミ入れすると割れが怖い。
A. ABSや薄肉部は避け、水性スミやアクリルで代替します。どうしても使う場合は内側だけにごく薄く。

Q. メタリックがギラつく。
A. 目の細かい金属色を低圧で薄吹きし、最後に半艶で整えると落ち着きます。

Q. 下地が透ける。
A. 透けは悪ではありません。奥行きに効くので、見せたい面だけ一段濃く重ねます。

比較:筆塗りとエアブラシ

筆塗り:準備が軽い/薄膜制御しやすい/ムラ対策が必要

エアブラシ:均一/狭小部は当てにくい/養生と乾燥管理が鍵

可動干渉とクリアランスの調整・潤滑の工夫

塗ったあとに割れる・白化する多くは、可動で塗膜が剪断されることが原因です。ここでは干渉の見極め→塗らない帯→潤滑→保持力調整の順に、動かしても安定する設計へ寄せます。塗るより“触れないようにする”発想が、いちばん効きます。

干渉の起点と対策

ヒンジは回転中心の内側で塗膜が圧縮され、外側で引き伸ばされます。内側は無塗装帯を広げ、外側は面をわずかに落として塗膜の伸びシロを作ります。ボールはカップ縁の一点に応力が集中しやすいので、縁のRを小さく削らないこと、球側は粉を噛まないよう艶を整えることが重要です。スライド関節はレールに付いた塗片が噛み込むので、動線上を確実に無塗装とします。

潤滑と艶で摩擦を管理する

トップコートで半艶〜艶で面の滑りを調整し、摺動部にはフッ素系のドライ潤滑を点で置きます。オイルやシリコンは後工程の塗装を弾くため、作業の最後に最小量で運用します。粉が付いていると潤滑が活きないので、可動前に柔らかい筆で払ってから動かします。

保持力のチューニング

塗装前に関節が緩いときは、カップの内側を極薄で瞬着コートし研ぎ出して当たりを変えます。塗装で渋くなった場合は無塗装帯を広げる、またはカップの縁に極少量のPTFE系を置いて“初動”だけ軽くすると安定します。ポリキャップは乾燥で弾力が変わるので、時間をおいてから最終判断をすると過剰な処置を避けられます。

関節タイプ 当たりやすい箇所 対策の要点 潤滑の扱い
ヒンジ 内側の角・外側のエッジ 無塗装帯+面落としで逃がす 半艶で滑らせ粉を払う
ボール カップ縁の一点 縁Rを保ち、球を清潔に保つ PTFEドライを点で
スライド レールの当たり面 動線全面を無塗装に設定 塗片を残さない
回転ピン ピン根本の段差 段差を鈍角化し薄膜管理 艶で調整し油は避ける

事例/ケース引用

「ボールの縁だけを0.2mm広げて無塗装帯にしたら、白化が止まりました。最後にPTFEを点で置いたら初動が軽く、保持も落ちずに安定しました。」

ベンチマーク早見

  • 無塗装帯の幅:見えない範囲で0.5〜1.0mm
  • 面落とし量:エッジで0.1〜0.2mm相当
  • 潤滑の量:綿棒先端の“点”で1〜2箇所
  • 可動テスト回数:仕上げ前後で各20往復

関節色の見せ方とウェザリングの足し引き

関節は主役ではないけれど、写真では存在感をつくる要。ここでは、陰影設計→チッピング→スミ入れ→埃と金属感の順で、可動を邪魔せず密度を足す方法を整理します。やり過ぎれば渋さが増して動きが鈍くなるので、点と線でコントロールしていきます。

陰影と色の分配

外装の影に隠れる関節は、明度差を少しだけ大きくすると読み取りやすくなります。谷は冷色寄りのグレー、天面は中立、エッジは明るい中間色で点光にして、線でなぞらないのがコツ。メタル色は“一番奥と動きの起点”に絞ると画面が締まります。

控えめなチッピングで立体感

筆先を細く整え、可動に沿った線の始点にだけ微小な欠けを置きます。面の真ん中には置かない、角の外側だけに点を散らす、という二点を守ると情報量が肥大化しません。下地を覗かせるのではなく、明度違いの同系色で“軽い擦れ”を描くと自然です。

スミ入れとエッジの管理

ABSや薄肉部ではエナメルの強溶剤に注意し、水性スミやアクリルで代替します。はみ出しは湿らせた綿棒で“押して取る”。線で引き直したいときは、乾燥後に艶を整えてからエッジへ明るい中間色を短い破線で置くと、やり過ぎを防げます。

  • 埃表現は薄いグレーを点で、可動部へは置かない
  • 金属感は粒子の細い色で、面の向きに沿って薄く
  • スミは線の始点と終点に濃淡差をつける
  • チッピングは角の外側だけに小さく散らす
  • 可動の軌跡へ色を置かないのが基本
  • メタル色は“起点”を決めて最小限に
  • 半艶基調、局所に艶差で素材感を出す

手順ステップ

  1. 陰影の配分を決め、谷と天面の温度差を設計
  2. チッピングは起点へ最小限の点で配置
  3. スミ入れは水性中心にし、拭き取りで艶を崩さない
  4. メタル色を起点へ薄く、最後に艶で統一
  5. 可動テスト→干渉があれば戻して修整

注意

ウェザリングは“可動軌跡の内側”に置かないのが原則。粉や塗片が噛み込むと初動が急に重くなり、塗膜も傷みます。

仕上げと保護と可動テストの反復

最後は守りの工程です。トップコートで艶を整え、可動を20往復単位でテストし、必要なら“塗らない帯”を広げて再調整します。仕上げ後のメンテや交換性も視野に、保護→テスト→調整→撮影まで一連として扱います。

トップコートと艶設計

関節は半艶を基調に、球やピンの接触部は艶を少しだけ上げると滑りが良くなります。消しすぎは質感が粉っぽくなり、光の抜けも悪くなります。吹き重ねるほど厚くなるので、1回で決めず、薄く2回で整えるのが安全です。乾燥後に埃を払ってから可動へ移ります。

可動テストの方法と判断

動かす前に粉を払い、最初の一往復はゆっくりと。違和感があれば止めて当たり面を確認します。ヒンジで白化が出た場合は、無塗装帯を0.2mm広げる、面落としを一段増やすなどの“戻せる”修整を選びます。ボールが渋い時は縁に当たっていることが多いので、縁のエッジを鈍角化し、球側は清掃のみで様子を見ます。

保守・交換と撮影の整え

保持力を長持ちさせるため、撮影や展示前に潤滑の点置きを見直します。消耗が出やすい箇所は、同径の市販ジョイントへ交換できる余地を設けておくと後々安心です。写真では関節の階調が潰れやすいので、斜光+レフで面を見せ、外装との明度差を“半段”だけ開くと落ち着きます。

ミニチェックリスト

  • トップコートは薄く2回で艶を整えたか
  • 可動テストは20往復で異音と白化を確認したか
  • 無塗装帯の再設定や面落としを記録したか
  • 潤滑は点置きで過多を避けたか
  • 撮影は斜光+レフで階調を維持したか

事例/ケース引用

「半艶を基準に球だけ艶を上げたら、初動が軽くなり塗膜の欠けも止まりました。記録して次のキットへ同じ配分を移せたのが収穫です。」

ベンチマーク早見

  • トップコートの間隔:10〜15分の“肌落ち着き”を確認
  • 可動往復数:仕上げ前後で各20回
  • 交換検討の目安:白化が3箇所以上なら再設計
  • 撮影時の明度差:外装との差を0.5段前後

まとめ

関節は“塗る場所を減らす設計”が鍵で、素材の相性と無塗装帯の設定がトラブルを最短で避けます。下処理で面を整え、薄い層で色を積み、艶で滑りを調整すれば、動かしても破綻しにくい仕上がりに近づきます。干渉の起点を観察し、塗膜の逃げを作り、潤滑は点で扱う。テストで違和感があれば戻して直す姿勢が、最終の安定へつながります。記録を残して配分を再現すれば、次のキットでは最初から迷いが少なくなります。関節が頼もしく動けば、ポーズも写真も自然に決まり、作った時間の手応えがぐっと濃く感じられます。